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⽇本薬局⽅とは

Introduction of JP

はじめに


⽇本薬局⽅は、薬機法の規定に基づき、医薬品の性状及び品質の適正を図るため、厚⽣労働⼤⾂が定める医薬品の規格・基準及び標準的試験法等の公的な基範書(公定書)である。現⾏は2026年(令和8年)4⽉10⽇に告⽰された第⼗九改正⽇本薬局⽅である。
その歴史、改正の進め⽅及び財団との関わりについて解説した。

⽇本薬局⽅初版の公布


日本薬局方の起源は明治期にある。明治維新後、日本では西洋医学の導入が進んだが、医薬品の品質は統一されておらず、粗悪品の流通が問題となっていた。
これを背景に、1881年(明治14年)に日本薬局方編集委員が任命され、翌年から編集委員会によって検討が開始された。
初代委員にはオランダ人アントン・ヨハネス・コルネリス・ゲールツ(Anton Johannes Cornelis Geerts)も名を連ねた。
ゲールツは1869年(明治2年)に長崎医学校(長崎大学医学部の前身)に招聘されたが、粗悪な輸入医薬品の取り締まりを訴えて東京司薬場(国立医薬品食品衛生研究所の前身)の開設の契機を作り、自らも1875年(明治8年)から京都司薬場の薬品試験監督を務めるなどした人物である。
内務省衛生局長であった長與專齋は、当時他国の複数の薬局方を基準として薬品試験が行われて混乱が生じていたことから国定の薬局方の必要性を考え、ゲールツらにオランダ語草稿を作らせていた。
この草稿がそのまま使われることはなかったが、1880年前後に刊行された諸外国の薬局方を参考としてゲールツら委員によるドイツ語での新たな草稿作成や編纂の後、1886年(明治19年)、日本初の国定薬局方である「日本薬局方初版」が公布された。
各条として468品目、また製剤総則10項目からなるものであった。なお、ゲールツは初版の公布を見ることなく1883年に亡くなっている。

ゲールツ博士肖像*

日本薬局方オランダ語草稿より*

日本薬局方の改正


日本薬局方は、医薬品の増加や科学技術の発展を背景に改正が続けられてきた。
構成上の大きな変化としては、1952年(昭和27年)の第六改正において試験法が一般試験法の部として整理され、また試験に用いる標準品が収載されたこと、1961年(昭和36年)の第七改正において国民医薬品集と統合されて医薬品各条第二部が創設され、2001年(平成13年)の第十四改正において参考情報(告示には含まれない)が創設されたこと、2006年(平成18年)の第十五改正で医薬品各条が一部構成に統合されたことが挙げられる。現在の構成は図の通りである。
また、収載される医薬品各条は第十九改正では2072品目となっている。


  • 通則

    日本薬局方全般に関わる共通のルール

  • ⽣薬総則

    天然物たる⽣薬独⾃の共通ルール

  • 製剤総則

    分類定義した各製剤に必要な試験、容器・包装、貯法等

  • ⼀般試験法

    医薬品各条の品質試験に共通して使用される試験の方法、標準品等

  • 医薬品各条

    個別の原薬及び製剤の規格・基準。化学薬品等と生薬に分かれている。

  • 参照スペクトル

    試験で標準とされる紫外可視吸収スペクトル及び⾚外吸収スペクトル

  • 参考情報

    医薬品の品質確保の上で重要な参考事項及び参考となる試験法


日本薬局方の改正は1976年(昭和51年)の第九改正から5年毎の改正が確立し、さらに1991年(平成3年)の第十二改正からは次回改正との間に2回の追補が作成されている。
薬事審議会日本薬局方部会が作成する日本薬局方作成基本方針に基づいて新規収載及び既収載項目の改正が行われる。
厚生労働省から委託を受けた医薬品医療機器総合機構(PMDA)が専門家からなる日本薬局方原案検討委員会を組織して、日本薬局方原案作成要領に従った改正原案を作成し、原則年4回行われるパブリックコメント募集を経た後厚生労働省に報告する。
原案は厚生労働省による薬事審議会日本薬局方部会への諮問・答申後にパブリックコメント募集を経て最終化される。


⽇本薬局⽅及びその改正と財団との関わり


医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団(旧名称:⽇本公定書協会)は⽇本薬局⽅と密接に関わりながら活動している。
財団は、⽇本薬局⽅標準品を製造する機関として厚⽣労働⼤⾂の登録を受け、医薬品の品質試験に⽤いられる標準品を製造・頒布している。第⼗九改正に収載された標準品は441品⽬である。[⇒標準品事業]
PMDAは⽇本薬局⽅原案を原案検討委員会により作成する過程で外部機関への委託により技術的校正を実施して、科学的技術的な⽭盾点の解消や⽇本薬局⽅原案作成要領との整合を図っている。
財団はこの技術的校正をこれまで数多く受注し、パブリックコメント時の原案作成に貢献し、新規収載品⽬の英訳を実施してきた。
[⇒⽇本薬局⽅フォーラム]
さらに財団では⽇本薬局⽅普及版、英⽂版⽇本薬局⽅普及版及び⽇本薬局⽅技術情報の編集を⾏い、⽇本薬局⽅の国内外への普及に貢献している。[⇒書籍]
医薬品の品質確保のため、⽇本薬局⽅の試験法は科学技術の進歩を反映させてアップデートしていく必要がある。財団では研究助成「⽇本薬局⽅の試験法等に関する研究」を企画し、これらの研究を⾏う研究者を⽀援している。[⇒助成研究]