MedDRA® データ検索及び提示:
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公表版3.19 |
免責および著作権に関する事項 本文書は著作権によって保護されており、如何なる場合であっても文書中にICHが版権を有することを明記することによって公有使用を許諾するものであり、複製、他文書での引用、改作、変更、翻訳または配布することができる(MedDRA®およびICHのロゴは除く)。本文書を多少とも改作、変更あるいは翻訳する場合には、原文書の変更あるいは原文書に基づくものであると、明確に表示、区分あるいは他の方法で識別できる合理的な手順を踏まえなければならない。原文書の改作、変更あるいは翻訳がICHによる推奨、あるいは支持されるものであるという印象は如何なるものであっても避けなければならない。 本資料は現状のまま提供され、一切の保証を伴わない。ICHおよび原文書著者は、本文書を使用することによって生じる如何なる苦情、損害またはその他の法的責任を負うものではない。 上記の使用許可は、第三者組織によって提供される情報には適用されない。したがって、第三者組織に著作権が帰属する文書を複製するには、その著作権者から承諾を得なければならない。 なお、MedDRA®の登録商標はICHとして登録している。 |
本資料の日本語版は、ICHのPTC-WGの国内メンバーの協力を得て、 JMO事業部が翻訳したものである。 |
ICH国際医薬用語集(MedDRA)は、ヒトに用いられる医療用製品に関する規制情報を共有するという特定の用途を目的に作成されたものである。ユーザーは、MedDRAでコーディングされたデータの交換を調和したものにするため、報告された症状、徴候、疾患などに対する用語選択に一貫性がなければならない。
MedDRAは、報告者の用語(verbatim term)を正確に記録するための下層語(LLT)と呼ばれる特異的な(詳細な)用語を収載する大きな用語集である。LLTは、リンク先の基本語(PT)と呼ばれる上位語と概ね同義語である。PTもどちらかと言うと特異的で語数も多い。
MedDRAのような高度に詳細な用語集ではデータ入力において読み替える必要性は低いが、医薬品開発、ファーマコビジランスおよびリスクマネジメントを支援するために必要なデータ検索、分類および提示の処理過程に影響が生じる。MedDRAには、コーディングに使用する非常に特異的な用語をより広い医学的概念で集約する、高位語(HLT)および高位グループ語(HLGT)と呼ばれるグループ用語の階層構造が設けられており、データ検索を容易にしている。MedDRAの多軸性(PTを一つ以上の器官別大分類(SOC)に関連付けられること)は、プライマリーまたはセカンダリーの異なるルートから柔軟なデータ検索を可能としている。グループ用語および多軸性はデータ検索のための適切な最初の検討方法を可能とするものではあるが、MedDRAの複雑性故に検索結果を最適化するためにはガイダンスが必要である。
本文書 「MedDRAデータ検索及び提示:考慮事項(MedDRA Data Retrieval and Presentation: Points to Consider ; DRP:PTC)」は、ICHがMedDRAユーザーに推奨するガイドである。本文書はMedDRAの3月改訂時(MedDRA Version 23.0以降)に毎年更新されるMedDRAの補足資料(support documentation)である。本文書は、ICH管理委員会(Management Committee)の指示によって設けられたワーキンググループにより作成され、メンテナンスされている。ワーキンググループメンバーは、ICHに加盟の規制当局と業界団体、WHO、MSSO、JMOの代表*で構成されている(ICHウェブサイトの複合領域ガイドラインにおける「M1 MedDRA Terminology」に掲載された現在のメンバー表を参照)。
なお、ワーキンググループは、ICHの各地域・国を越えたMedDRA開始とその使用を支援するため、用語選択の基本的な原則に焦点を当てた本文書の要約版(condensed version)を開発した(付録6.1項参照)。その要約版は英語、日本語および他の全翻訳MTS:PTC文書を提供できる言語を除く全てのMedDRA多言語版で提供される。種々の言語で全翻訳される本文書は引き続きメンテナンスが行われ、基準となる完全版(complete reference document)として更新される。
JMO注)多言語版の要約版はMedDRAのウェブサイト(www.meddra.org)から参照できる(付録6.1項参照)。
*原文はrepresentatives of ICH regulatory and industry members, the World Health Organization, the MedDRA Maintenance and Support Services Organization (MSSO), and the Japanese Maintenance Organization (JMO)
本文書に記載されている原則は、ユーザーがデータ入力(コーディング)のための「MedDRA用語選択:考慮事項(MedDRA Term Selection: Points to Consider)」文書に記述された原則と併せて適用した場合に最も効果を発揮する。本文書は、製薬企業および規制当局のいずれの目的にも利用できるデータ検索と提示の選択肢を示している。MedDRA自体にも検索のための仕組みが備えられているが、本書はより広範なデータ検索を対象としている。
本文書で示している例示は、読者の理解を容易にすることを意図したものであり、規制当局が求める要件を示したものではない。
文章中に引用されている図表は付録6.2項にまとめて収載されている。
JMO注)英語版では図表を全てFigure xx として通し番号が付与されており、日本語版では図と表を合わせて「図表 xx」として記載している。なお、本書中の該当する図表番号にはハイパーリンクが付けられており、所定の操作(例えば「Ctrl」+マウスの左クリック等)により付録6.2項の該当する図表にジャンプできる。
1.1 本文書の目的
本文書「MedDRAデータ検索及び提示:考慮事項」の目的は、データ検索の選択肢がどのようにデータ出力の正確性と一貫性に影響するのかを実例を挙げて示すことである。例えば、一部の医薬品あるいは治療領域ではデータ出力に特別な方法が必要となるかもしれない。「MedDRA用語選択:考慮事項 」に記述されている、あるいは企業独自のコーディングガイドラインに記述されている用語選択オプションも考慮するべきである。
MedDRAを利用している組織は、本文書との整合性に留意して作成した組織独自のガイドライン中に、データ検索と出力の方針、方法、品質保証プロセスなどを記述することが推奨される。
1.2 MedDRAの用途
MedDRAは紙媒体または電子的な個別症例報告における副作用/有害事象(AR/AE)用語の報告に使用される。MedDRAの構造は、安全性データの解析が容易に実施できるよう、これらの報告用語を医学的に意味のあるグループに集約することを可能としている。MedDRAはまた、報告(表、ラインリスト等)中のAR/AEデータを一覧する、類似のAR/AEの頻度を計算する、あるいは製品の使用理由、臨床検査、病歴や社会的な経歴等のような関連するデータを把握し解析するのにも使用できる。
1.3 本文書の利用方法
本文書に記載されている原則は、MedDRAでコーディングされた全てのデータに適用されるものである。本書は集約されたデータを対象に絞り、その考慮事項を示す。本文書はMedDRAの個別症例報告、医薬品表示、医学的評価、統計的手法の利用に関する問題は取り扱わない。
MedDRA自体には利用に際しての特定のガイドラインは含まれていないため、本PTC文書は、全てのMedDRAユーザーの支援を目的とする。本書はデータの分析や提示の際に、臨床データの医学的に意味のある評価および分析のため、MedDRAの一貫性のある使用を推進する枠組みを示すものである。
本文書はMedDRAの特徴を説明し、MedDRAの構造、ルールおよび取り決め事項がデータ出力に与える影響について記述している。本文書に記載されている例示および選択肢は特定の規制報告要件や特定のデータベースに関連する問題点について明らかにすることを意図してはいない。本文書で全ての状況について記述できるものではないことから、常に医学的判断を適用すべきである。
本文書はMedDRAのトレーニングに代わるものではない。ユーザーがMedDRAの構造および内容についての知識を有していることが必須である。ユーザーはMedDRAを最大限に活用するために「ICH国際医薬用語集(MedDRA)手引書」、「MedDRA標準検索式(SMQ)手引書」(付録 6.1項を参照)および「MedDRA用語選択:考慮事項」を参照すべきである。本文書に関するJMOユーザーの質問やコメントはJMOウェブサイト(https://www.pmrj.jp/jmo)のヘルプデスクに問い合わせされたい。
安全性監視活動におけるSMQの使用目的と適切にSMQを利用するための付加的情報については、CIOMS 報告書「Development and Rational Use of Standardised MedDRA Queries (SMQs): Retrieving Adverse Drug Reactions with MedDRA」も参照されたい。「Red Book」 として知られる本報告書の第2版(2016)に関する詳細情報は、CIOMSのウェブサイトを参照されたい(付録. 6.1項 参考情報へのリンクを参照)。
JMO注)CIOMS 報告書「Development and Rational Use of Standardised MedDRA Queries (SMQs): Retrieving Adverse Drug Reactions with MedDRA」はJMOから邦訳が提供されている。
2.1 原データの質
報告された原情報の質が一貫性のある適切な用語選択によって確実に保持される場合に、質の良いデータ出力が得られる。各組織はデータの品質チェックを継続的に実施すべきである。データ品質の問題は「MedDRA用語選択:考慮事項」でも論じられている。
更なる情報は、データの質に関する事例とガイダンスが詳述されたMedDRA考慮事項:コンパニオンドキュメントの第2章 を参照されたい(付録6.1項を参照)。
2.1.1 データ変換における留意点
他の用語集からMedDRAへのデータ変換方法について特に留意されたい。用いられた変換方法は検索と提示の方針に大きな影響を与える可能性がある。
Ø 方法1 過去にコーディングされた用語からMedDRA用語にデータを変換する
結果は過去の用語集の特性が反映される。
より詳細なMedDRA用語の特性による利点は得られない。
例示
報告用語 | 過去の用語 | MedDRA用語 |
胃腸虚血 (Gastrointestinal ischaemia) |
胃腸障害 (Gastrointestinal Disorder) |
胃腸障害 (Gastrointestinal disorder) |
Ø 方法2 過去の原報告用語(verbatim terms)からMedDRA用語にデータを変換する
例示
報告用語 | 過去の用語 | MedDRA用語 |
胃腸虚血 (Gastrointestinal ischaemia) |
胃腸障害 (Gastrointestinal Disorder) |
胃腸虚血 (Gastrointestinal ischaemia) |
データ変換した日付と併せてデータ変換方法と使用したMedDRAのバージョンも記録しておくこと。
2.1.2 データ変換方法の影響
上記に示した二つの変換方法を併用した場合、出力データの解釈に影響が及ぶ可能性がある。
例示
データ変換方法を併用した場合のデータ出力 |
過去のデータは過去にコーディングされた用語からMedDRA用語に変換し(方法1)、新たに入手されたデータは直接報告用語からMedDRAでコーディングする場合、検索結果の特性が異なるために、データ出力結果の解釈が難しくなる可能性がある。 |
検索の方針を定める際に、方法1を用いて変換されたデータは報告用語を確認することが有用であるかもしれない。検索式が特異的な(詳細な)MedDRA用語を基にして作成された場合、過去に特異性の低い(荒い)用語でコーディングされたデータは見落とされてしまう可能性がある。
例示
方法1による変換が検索の方針に与える影響 |
MedDRAでPT 「胃腸虚血(Gastrointestinal ischaemia)」を検索した場合、過去の用語集で「胃腸障害(Gastrointestinal disorder)」にコーディングされている症例(gastrointestinal ischaemia)は見逃される。このケースでは、過去データを変換した時期と使用したMedDRAのバージョンを確認することが重要であろう。 |
このレベルの詳細な検索を行う場合には、精査するか報告用語からコーディングし直す必要があるかもしれない。過去のデータでは、AR/AE項目以外のデータフィールドにこの情報が格納されているかもしれない。
2.2 データ検索と提示プロセスの文書化
MedDRA用語選択ルール、検索と提示の方針(SMQおよび他の検索式の利用を含む)および品質確保の方法を文書で記録することが重要である。組織独自の基本方針はPTC文書と整合性をもつことが必要であり、また下記の事項を含むべきである。
検索に用いるMedDRAバージョン
検索の方針(再現するに十分な詳細なもの)
バージョンアップの手順
個別対応のMedDRA検索式の作成と維持管理の方法
2.3 MedDRAを変更しないこと
MedDRAは標準用語集であり、用語の階層構造はあらかじめ決められている。
ユーザーはプライマリーSOCの変更など便宜的な構造上の変更は行ってはならない。若しそのようなことが行われればMedDRAの標準用語集としての品質を危険にさらすこととなる。
用語が階層構造上で不適切に分類されていると考えた場合には、変更要請をMSSOに提出すべきである。
2.4 組織独自のデータの特徴
MedDRAは標準用語集であるが、異なる組織が様々な方法で使用している。組織独自のデータの特徴と導入の方針を理解することが重要である。
各組織は、MedDRAに関する専門的な助言を与えることができ、また下記のようなデータベースの特徴に関する知識を持っているMedDRAスペシャリスト(専門家)に相談できるようにしておくべきである。
データベースの構造(どのようにMedDRAの階層が保存され使用されるか)
データの格納状況(例えば、用語レベル、シノニム/報告用語)
他の用語集からMedDRAへのデータ変換(該当する場合)
コーディング実務の推移
例示
コーディング実務の推移の影響 |
性別を特定した用語に対応していない過去の用語集でコーディングされたデータとMedDRAでコーディングされたデータを比較する場合は、性別を特定した用語が及ぼす影響を勘案する。もし使用していた過去の用語集が「乳がん」に対して性別を特定しない一つの用語しか収載していなかったのであれば、現在のデータに対しMedDRAの性別を特定した「乳がん」 の用語を選択していることによる影響を考慮されたい。 |
制限/制約
例示
多軸構造を持つPTの出力または表示 |
データベースの設定によってはセカンダリーリンクによる出力または表示に対応していない場合があるので、特定のHLTまたはHLGTを用いた検索時にセカンダリーSOCに配置されているPTが表示されるものと思い込まないこと。 |
使用されている用語選択の方式
o 一つの医学的概念をコーディングする際に、二つ以上の用語を選択すると、カウントされる用語数が増加する。
o 診断名のみを選択している(徴候および症状は選択しない)とカウントされる用語数は少なくなる。
o 診断名と徴候および症状の用語の両方がコーディングされている場合の有害事象 プロフィールは診断名のみをコーディングしている場合と異なって見えるかもしれない。他のデータベース(例えば、共同開発や共同販売の提携会社、規制当局)から入手したデータを利用したり比較したりする場合は、常に各組織のコーディングの規約を念頭に置くこと。
2.5 データ検索と分析に影響を及ぼすMedDRAの特徴
MedDRAの構造、ルールおよび取り決め事項の詳細は「ICH国際医薬用語集(MedDRA)手引書」に記載されている。データ検索と提示の際は、次に示すMedDRAの特徴に留意されたい。
2.5.1 グループ用語(HLTおよびHLGT)
HLTとHLGTレベルは臨床的に関連のある概念をグループとしているので、データ分析と検索の補助ツールである。
例示
不整脈(Cardiac Arrhythmias) |
HLGT 「不整脈」(Cardiac arrhythmias)
HLT 「心伝導障害」(Cardiac conduction disorders)
HLT 「心拍障害NEC」(Rate and rhythm disorders NEC)
HLT 「上室性不整脈」(Supraventricular arrhythmias)
HLT 「心室性不整脈および心停止」(Ventricular arrhythmias and cardiac arrest) |
例示は、MedDRAバージョン23.0の用語を使用
2.5.1.1 グループ用語に含まれる用語の確認
対象とするHLGT/HLTに含まれる用語を検討し、全ての用語が出力の目的に適していることを確認する。
例示
血圧に関する用語 |
HLT 「血管検査NEC(血圧測定を含む)」(Vascular tests NEC (incl blood pressure))
PT 「血圧異常」(Blood pressure abnormal)
PT 「血圧低下」(Blood pressure decreased)
PT 「血圧上昇」(Blood pressure increased)
PT 「血圧測定」(Blood pressure measurement)
血圧上昇・低下に関する用語は、共通のHLTの下にグループ化されており、このHLTには肺動脈圧、血管抵抗、血行力学検査等のPTも含まれていることに注意されたい。
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例示は、MedDRAバージョン23.0の用語を使用
2.5.2 情報粒度(Granularity)
MedDRA用語における(基本語:PT)は、他の用語集でこれに相当する用語に比べると、より特異的(粒度が高い)である。図表1.は他の用語集では単一の概念でコーディングされていた用語がMedDRAでは複数のPTとなることを説明したものである。
他の用語では単一の用語として表示される関連する事象が、MedDRAでは複数のPTで表示される可能性がある。この事がシグナル検出に影響する可能性があるので留意すべきである。
2.5.3 多軸性(Multi-axiality)
多軸性とは、PTが二つ以上のSOCに属している可能性があることを意味する。多軸性は用語が医学的には適切な異なる分類(例えば、病因別や器官別)でグループ化されることを可能にしている。各PTには一つのプライマリーSOCが定められており、他のSOCへの関連付けは全て「セカンダリー」と呼ばれる。プライマリーSOCは一つだけなので、全てのSOCを用いてデータを出力するときに事象の重複カウントが回避される。
MedDRAではPTのセカンダリーリンクとして可能性があるすべてのSOCにリンクが設定されている訳ではない。しかし、追加変更要請の結果として、新規あるいは異なるSOCへ関連付けられることがある。
2.5.3.1 プライマリーSOCへの関連付けのルール
プライマリーSOCの付与ルールは「ICH国際医薬用語集(MedDRA)手引書」に記載されている。このルールはMedDRAの中での用語配置に影響し、SOC別のデータ表示を決定する。これらのルールは特定の医学的状態に関連する用語が二つ以上のSOCにリンクすることを可能にしていることから、データを見落とすことがないように、ユーザーは全てのMedDRAのSOCについて全般的な構造と内容に精通しているべきである。
例示
障害の タイプ |
プライマリーSOCのルール | 事例 | 備考 |
先天性 | 先天性障害の全用語はSOC「先天性、家族性および遺伝性障害」をプライマリーSOCとしている。 | PT「先天性胆管欠損」(Congenital absence of bile ducts)はSOC「先天性、家族性および遺伝性障害」をプライマリーSOCとし、SOC「肝胆道系障害」をセカンダリーSOCとしている。 | これらの用語は障害の発現部位のSOCをセカンダリーSOCとしている。 |
新生物 | 悪性および良性の新生物(嚢胞およびポリープを除く)の全用語はSOC「良性、悪性および詳細不明の新生物(嚢胞およびポリープを含む)」をプライマリーSOCとしている。 | PT「皮膚癌」(Skin cancer)はSOC「良性、悪性および詳細不明の新生物(嚢胞およびポリープを含む)」をプライマリーSOCとし、SOC「皮膚および皮下組織障害」をセカンダリーSOCとしている。 | 「嚢胞、嚢腫」(Cyst)と「ポリープ」(polyp)の用語にはこのルールは適用されない。これらの用語のプライマリーSOCは発現部位のSOCで、セカンダリーSOC がSOC「新生物」である。 |
感染症 | 感染性障害の全用語はSOC「感染症および寄生虫症」をプライマリーSOCとしている。 | PT「感染性小腸結腸炎」(Enterocolitis infectious)はSOC「感染症および寄生虫症」をプライマリーSOCとし、SOC「胃腸障害」をセカンダリーSOCとしている。 | これらの用語は障害の発現部位のSOCをセカンダリーSOCとしている。 |
もし、あるPTが上記の三つのSOCの複数にリンクしている場合は、プライマリーSOCを決定するのに次の優先順位が適用される。
先天性、家族性および遺伝性障害
良性、悪性および詳細不明の新生物(嚢胞およびポリープを含む)
感染症および寄生虫症
2.5.3.2 非多軸性のSOC
次の三つのSOCに属する用語は多軸のリンクを付与されていない。
SOC 「臨床検査」
SOC 「外科および内科処置」
SOC 「社会環境」
このことは多軸性に頼って対象とするMedDRAの全用語を探し出すことを不可能としているので、検索式や検索の方針を策定する際に重要である。
例示
非多軸性のSOCがデータ検索に対する影響 |
血小板減少症の事象や症例のデータベースを検索する際、SOC 「血液およびリンパ系障害」のPTにコーディングされたデータを最初に検索対象とすることは論理的である。また、SOC 「臨床検査」にコーディングされたPT 「血小板数減少」のようなデータや SOC 「外科および内科処置」の用語にコーディングされた PT 「血小板輸血」のようなデータもまた対象となりうる。これらのうちどちらのPTもSOC 「血液およびリンパ系障害」にリンクしていない。 非多軸性のSOCの用語でコーディングされたデータを考慮しないと、血小板減少症の分析が不十分なものになってしまう可能性がある。 |
上記のように、臨床検査の結果の用語はSOC 「臨床検査」にリンクしており、対応する医学的状況との多軸的なリンクがない。MedDRAでコーディングされたデータの表やデータリストを検討する際には、このことに留意されたい。
例示
SOC 「臨床検査」の検査結果の用語 |
肝異常の事象や症例をデータベースで検索する際に、SOC 「肝胆道系障害」のPTにコーディングされたデータを最初に検索対象とすることは論理的である。 また、SOC 「臨床検査」にコーディングされたPT 「肝機能検査異常」のようなデータや SOC 「外科および内科処置」の用語にコーディングされた PT 「肝移植」のようなデータもまた対象となりうる。これらのうちどちらのPTもSOC 「肝胆道系障害」にリンクしていない。 非多軸性のSOCの用語でコーディングされたデータはその特性を考慮しないと、分析が不十分なものになってしまう可能性がある。 |
図表2.は臨床検査の結果としてコーディングされるデータと関連する医学的状態の影響を更に説明している。
2.5.3.3 臨床的に関連あるPT
臨床的に関連性のあるPTが、一つのSOC中の異なるグループに配置されていたり二つ以上のSOCに分散して配置されているために、見落とされたり互いに関連があるのを認識されなかったりすることがある(2.5.3項参照)。
例示
異なるグループに配置されている類似した皮膚の状態 |
HLGT 「表皮および皮膚異常」 (Epidermal and dermal conditions)
HLT 「水疱形成」 (Bullous conditions)
PT 「スティーヴンス・ジョンソン症候群」 (Stevens-Johnson syndrome)
PT 「中毒性表皮壊死融解症」 (Toxic epidermal necrolysis)
HLT 「表皮剥脱」 (Exfoliative conditions)
PT 「剥脱性皮膚炎」 (Dermatitis exfoliative)
PT 「全身性剥脱性皮膚炎」 (Dermatitis exfoliative generalised)
PT 「ニコルスキー現象」 (Nikolsky's sign)
PT 「皮膚剥脱」 (Skin exfoliation) |
例示は、MedDRAバージョン23.0の用語を使用
上記の点を考慮しないと、該当する医学的概念の頻度が過小評価されることとなり、データの解釈が大きく影響される可能性がある(3.2項を参照)。
MedDRAのSOCは発現部位、病因学、特別な目的別に用語をグルーピングしている。データはユーザーが予期しないSOCに属している用語にコーディングされている可能性がある。関心のある医学的状態の頻度に対し、多軸構造が影響する可能性があることに留意されたい。
例示
基本語(PT) | プライマリー SOC |
処置後出血 | 傷害、中毒および処置合併症 |
胸痛 | 一般・全身障害および投与部位の状態 |
2.6 MedDRAバージョン管理
MedDRAは年2回更新されている。バージョン“X.0”ではシンプルチェンジとコンプレックスチェンジの変更がされ、バージョン“X.1”ではシンプルチェンジの変更のみがされる。
データ出力に影響する可能性があるので、各組織はこのようなMedDRAの更新の種別を認識しておくべきである。MedDRA更新のタイプ | |
シンプルチェンジ | コンプレックスチェンジ |
・PTの追加(新規の医学概念) ・既存のPTのリンクするHLTの変更 ・PTのLLTへの降格 ・既存のPTのリンクの追加あるいは削除 ・LLTの追加 ・既存のLLTのリンクするPTの変更 ・既存のLLTのPTへの昇格 ・LLTのカレントからノンカレント、ノンカレントからカレントへの変更 ・プライマリーSOCの変更 ・SMQの変更 |
・多軸リンクの追加または変更 ・新しいグループ用語の追加 ・既存のグループ用語の併合 ・SOCの再構築 ・新規SOCの追加 |
シンプルチェンジおよびコンプレックスチェンジのいずれも検索と提示の方針に影響を与える。ユーザーは各MedDRA更新時に提供される文書、特に ”What’s New” 文書を読んで知っておくべきである。MSSO/JMOはMedDRAのバージョン間の変更を比較する支援ツールをユーザーに提供している。バージョンレポート(MSSOが提供する”Version Report”、JMOが提供する「改訂情報」) は、MedDRAの一つ前のバージョンと最新のバージョン間での全ての変更をスプレッドシートとしたリストであり、MedDRAの各新バージョンリリースとともに提供される。MSSOでは、任意の二つのMedDRAバージョン間(連続しないものにも対応)での変更の影響を特定し理解することを支援するMedDRA Version Analysis Tool (MVAT) も提供している。
(本文書の付録 6.1、および「MedDRA用語選択:考慮事項」の4.1.1を参照)
ユーザー組織ではMedDRAのバージョン更新に関する方針を検討し文書で記録すべきである。また、検索および提示を計画あるいは実行する際にはMedDRAのバージョンを文書で記録すべきである。
MedDRAの変更が既存データの頻度表示を含む検索結果に影響を与えることがあることに留意されたい。
例示
バージョン更新の影響 - 降格されたPT |
PT「坐骨骨折」はMedDRAバージョン22.1を使って開発された検索式に含まれていた。同じ検索をバージョン23.0でコーディングしたデータを使って実施した場合、本事象はPTレベルでは検索されない。これは「坐骨骨折」がPT ではなくなり、LLTに降格してPT「骨盤骨折」にリンクしたためである。図表3を参照されたい。 |
例示は、MedDRAバージョン22.1および23.0の用語を使用
例示
バージョン更新の影響 - プライマリーSOC配置の変更 |
MedDRAバージョン22.1ではPT「血管性認知障害」のプライマリーリンクはSOC「精神障害」で、セカンダリーリンクがSOC「神経系障害」とSOC「血管障害」であった。バージョン23.0ではプライマリーリンクがSOC「神経系障害」で、セカンダリーリンクがSOC「精神障害」とSOC「血管障害」となっている。プライマリーSOCから出力されたデータでは、PT「血管性認知障害」はSOC「精神障害」から“消失”したように見える。 |
例示は、MedDRAバージョン22.1および23.0の用語を使用
検索を構築する用語は検索されるデータと同一のMedDRAバージョンである必要がある。組織によっては、過去データは二つ以上のMedDRAバージョンでコーディングされていることがある。
新しい用語は、より新しいMedDRAバージョンで作成された検索式には含まれるかもしれない。各組織のバージョン管理方法にもよるが、これらの新しい用語は旧データには存在しないことになる。これでは不十分な検索結果になってしまうかもしれない。
検索式が過去のバージョンで組み立てられている場合(例えば、すでに終了した試験に以前使用された)は、新しいバージョンでコーディングされたデータを検出できないことがあるので、総合安全性概要(ISS:Integrated Summary of Safety)に必要な全てのデータを検出できないかもしれない。組織内システムに蓄積された全ての検索式は新しいデータに用いる前に適切なバージョンに更新する必要がある。
MedDRAのバージョン更新をどのように取扱うかについての助言は本文書の範囲外である(「MedDRA用語選択:考慮事項」の付録 4.1を参照)。データベースによっては異なるMedDRAバージョンでコーディングした多数の臨床試験データを保有していることがある。これはデータを集積する際(例えばISS作成時)に影響する。臨床試験と市販後データのバージョン管理オプションに関する更なる情報についてはMedDRA Best Practicesも参照されたい(付録 6.1参照)。
JMO注)MSSOの推奨文書は「MedDRA/J利用の手引き」に収載されている。また、JMOのWebsite(会員へのお知らせ-ドキュメントライブラリー)からも入手できる。
3.1 一般原則
データ検索は、臨床試験データの要約や分析、ファーマコビジランス、医薬品情報に対する問い合わせおよびその他多くの目的で実施される。データを検索する際に適用される検索方針、方法およびツールは、出力結果をどう利用するという目的によって異なることがある。
データ検索の一般的な手順の概略は下記の図のとおりである。
データ検索する前提に、詳細な調査を必要とする既知あるいは潜在的な安全性の課題が存在するであろう。非臨床試験、臨床試験、市販後調査、類似製品(同効薬)や規制当局の質問などの情報が、焦点を当てる対象を特定することに有用と思われる。こうして得られた理解が検索用語の集積、適用する方法、あるいは最適なデータ表示方法を定める方針に影響する可能性がある。
個々のデータベースの特徴、組織独自のデータ入力ルール、データソースおよびデータベースのサイズ、全データのコーディング使用されたMedDRAのバージョンなどを認識する必要がある。過去に利用した検索を再利用できる可能性があり、特にファーマコビジランスにおいては、検索式が更新されていれば可能であろう。
有害事象を提示する際、その事象の真の発現率が不明確とならないよう、関連する事象をまとめて提示する(即ち、対象とする状態と同一とされる事象をグループ化する)ことが重要である。検索方針は文書で記録すべきである。検索の出力結果のみではデータの評価(例えば、ある状況の発現頻度)には不十分であるかもしれない。検索結果は最初に提起された問題点と対比して評価すべきである。
関連ある有害事象をカテゴリー化するのは困難な場合がある。検索のパラメーターが狭すぎれば関連の可能性がある事象を見落とすことがあり、パラメーターが広すぎると傾向やシグナルを特定することが困難になるかもしれない。症候群として考えられるか否かに係わらず、分析のために可能性のある事象や医学的状態に該当する用語をグループ化する際には、慎重な判断が必要である。目的は、個別症例の見直しを含む、追加の分析を必要とする可能性がある傾向を識別することである。複雑な質問式の場合は、対象とする医学的状態の定義を包含したデータ分析計画を作成することが推奨される。質問内容に相応しい最適なツールと方法を見つけ出すために、全ての関係者の間で協議を持つことが奨められる。
下表に示す検索種別については、上記の原則を適用すべきであろう:
事例
一般的原則を適用する検索の種別 |
・サマリーレポートによる安全性プロフィールの概要、定期的安全性最新報告 (PSUR)、総合安全性概要(ISS)など ・AR/AE頻度の比較(自発報告の報告率や臨床試験での頻度) ・特定の安全性上の関心事項の分析 ・リスクを有する患者小集団の特定(例えば、病歴情報の探索) |
3.1.1 グラフによる表示
大規模データを扱う場合は特に、グラフでの表示が非常に有用である。グラフ表示は潜在する。
シグナルを素早く視覚に訴える。データを表示するのにグラフ表示を活用することが推奨される。ヒストグラム、棒グラフ、円グラフは、より複雑な統計的手法により作成された表示(例えば、データマイニングアルゴリズムからの出力)と同様に有用である。そのような種類の例示は、本書の付録6.2項の「図表」に示されている。
3.1.2 患者の部分母集団
年齢や性別など特定の部分母集団のデータ検索のために個々のデータベースの患者背景のデータフィールドを参照することは必須である。
JMO注)小児と性別の有害事象用語リストは、MedDRA MB会議の承認を経てMSSOがメンテナンスしているもので、バージョン11.0から提供されていたが、バージョン19.0を最後にメンテナンスを終了した。JMOでは日本語を付加したリストをJMOのWebsite(会員へのお知らせ-ドキュメントライブラリー)に掲載している。
3.2 安全性プロフィール概要の提示
安全性プロフィール概要を提示する目的は次のとおり。
AR/AEの分布を明らかにする
より深い分析が必要な分野を特定する
関連する医学的状態に伴う可能性のある用語のパターンが即時に認識できるようにデータを提示すべきである。この趣旨を実現するためには、用語の全リストの提示からデータマイニング手法などの洗練された統計学的な手法(付録 6.1項のICH E2E:医薬品安全性監視の計画文書(Pharmacovigilance Planning Document)を参照)がある。
JMO注)日本では医薬品医療機器総合機構のWebsite(http://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0014.html)でICH関連情報を参照できる。
従来の標準的な方法は「器官分類(Body System)」や「器官別大分類 (System Organ Class)」と「基本語」でデータを提示することであり、これはMedDRAのSOCとPTに相当する。しかし、前述したMedDRAの特性(情報粒度、多軸構造など)により、このPT-SOCによる方法は、出力する目的によっては他のデータ出力方法(例えば、セカンダリーSOCによる出力、HLTやHLGTのグループ化用語を用いた表示など)も追加する必要があるかもしれない。例えば、類似の医学的状態が種々の報告用語として記述されている場合、それらは下記のように区分されて表示される可能性がある。
多数の異なるPT(シグナルが希釈される)
異なるグループ用語
異なるSOC
ユーザーが直感的に予期しないSOC(例えば、SOC「一般・全身障害および投与部位の状態」、SOC「妊娠、産褥および周産期の状態」、SOC「傷害、中毒および処置合併症」、SOC「感染症および寄生虫症」)。次の例示を参照されたい。
例示
SOC 「一般・全身障害および投与部位の状態」 をプライマリー、SOC 「心臓障害」 をセカンダリーとするPT |
PT 「胸部不快感」(Chest discomfort)
PT 「胸痛」(Chest pain)
PT 「末梢性浮腫」(Oedema peripheral)
PT 「突然死」(Sudden death)
PT 「限局性浮腫」(Localised oedema)
PT 「心疾患による浮腫」(Oedema due to cardiac disease)
PT 「新生児末梢性浮腫」(Peripheral oedema neonatal)
PT 「心臓死」 ( Cardiac death) |
例示は、MedDRAバージョン23.0の用語を使用
JMO注)Body System(器官分類)はCOSTARTで用いられていた分類、System Organ Class(器官別大分類)はWHOARTおよびJARTで用いられていた分類で、MedDRAも同じSystem Organ Class(器官別大分類)を用いているが、内容は同一ではない。
3.2.1 プライマリーSOCによる概観
この概観はデータ検索の第一段階として実施し、その後の更なる分析の計画に利用することを推奨する。
この手法は全ての事象を一覧し、SOCごとの集団として認識するのに有用であろう。また、階層構造を用いれば、HLTやHLGTごとの集団として確認される。小規模のデータセットでは、このプライマリーSOCによる表示が必要で十分なものであるかもしれない。
Ø 目的:
全事象を盛り込む(如何なる事象も除外しない)
全データをMedDRAの階層構造を用いて表示する
Ø 方法:
HLGT、HLTおよびPTのプライマリーSOCによるデータの提示は標準的な表(臨床試験および市販後データ)および累積サマリー(市販後データ)で使用することができる。ラインリスト(臨床試験および市販後データ)もプライマリーSOCとPTで提示することができる。出力の目的によっては、プライマリーSOCとPTのみを使った表示が有用である:大規模なデータセットについては、SOCとともにグループ化用語(HLGTとHLT)による表示が望ましいかもしれない。図表4.はそのような出力の例示である。
言語や文字体系の違いに関係なくSOC順を同一とするために、SOCの国際合意順が決められた(図表5.参照)。このSOCの提示順はAR/AE報告における各SOCの相対的な重要度に基づいている(MedDRA手引書およびMedDRA ASCIIファイル参照)。国際合意順を用いれば、例えばSPC(Summary of Product Characteristics)ガイドラインなどの行政関連の機能に対応できるであろう。データを交換する組織間ではデータの提示の際のSOCの順について合意しておく必要がある。
表やグラフによるデータの表示は結果を見る人の理解を助けるであろう。図表6.、図表7.および図表8.はそのような表示の例である。
図表9a.と図表9b.はある化合物の二つの患者集団における提示である。それぞれの集団において、SOCと報告者別に分けて表示されている。対となっている棒グラフの上部のバー(青色)は消費者からの、下部のバー(赤色)は医療専門家からの報告を示している。より詳細な情報が必要な場合は、発現頻度の降順にPTで有害事象を表示すればよい。 綿密な分析には、グループ化すべき用語を特定するために医学的専門知識が要求される。
Ø 利点:
データ分布の全体像を示し、より深い分析が必要性を考慮する可能性のある特別な関心領域を特定する手助けをする。
グループ用語は関連するPTを集合させ、関心のある医学的状態を特定することを容易にする。
個々のPTは、重複カウントされないよう、一回だけ表示する。
プライマリーSOCによる概観は、小規模のデータセットには適切な唯一の分析方法かもしれない。
Ø 限界:
特定の医学的状態/症候群に関連する用語が異なるSOCに分類されている場合があるので、PTのプライマリーSOC配置を基にしたこの方法では、ある医学的な状態等に関係する用語のグループ化が不完全となる可能性がある。
MedDRAの用語配置ルールのため、事象によってはユーザーが予想する配置に見つからない場合もある。
大規模なデータセットに適用した場合に、出力結果が冗長なものとなる可能性がある。
3.2.2 小規模データセットの概観提示
安全性プロフィールが小さなPTのリストで構成されている場合(例えば、臨床開発の初期のように)は、PT表示ですることで十分であるかもしれない。図表10.はその事例である。
3.2.3 目的を絞った検索
関心のある医学概念をさらに調査する際、目的を絞った検索は有用である。例えば、規制当局からの問い合わせへの対応のために関心のある症例や事象の件数を確認するために目的を定めた検索を利用できる可能性がある。
以下のリストに示すような状況においては(注:このリストは全てではない)、利用者はプライマリーSOCによる概観(3.2.1項参照)に加えて、特別な検索の設計を必要とするかもしれない。
プライマリーSOCによる出力で見られた内容について、さらに検討する場合
既に特定されている安全性の懸案事項(例えば、既知の薬剤クラス効果、毒性試験・動物試験の結果、など)
特別に関心のある事象のモニタリング
規制当局などのからの質問への対応として
以下に目的を定めた検索のアプローチのオプションを示す。これらのアプローチの適用順は、利用できるリソース、専門知識、システムなどの要因によるであろう。
3.2.3.1 セカンダリーSOC配置を用いた目的を絞った検索
この目的を定めた検索は、プライマリーSOCによる概観(3.2.1項参照)にセカンダリーSOCリンクを合わせることによって増補することができる。この方法の利用で、より包括的な“概観”が可能となり、MedDRAの多軸構造の利点(即ち、用語の医学的な相互関係)を最大限に利用できる。
Ø 方法:
セカンダリーSOC配置を用いた目的を絞った検索の方法は、組織のデータベースの特性によって異なる可能性がある。
プライマリーとセカンダリーSOC配置の双方を表示できるように、SOC、HLGT、HLTを検索する。
セカンダリーSOCにリンクするPTをプログラムにより出力する(図表11.参照)。
もしデータベースが自動的にセカンダリーSOCの出力が出来ない場合は、可能な方法で検索を実施すべきである(例えば、プライマリーとセカンダリーSOCに配置されている全ての個別のPTのリストを出力するプログラムの作成)。
・ MSSOが提供するデスクトップブラウザーおよびオンラインブラウザーのユーザーは、検索記録(search/research bin)からエクスポートされた用語もしくは階層分析(Hierarchy Analysis feature)を用いてアップロードされた用語のセカンダリーSOCパスを選択表示できる。これらのブラウザー機能によって、ユーザーは特別なプログラムを必要とせずにセカンダリーSOC配置を閲覧したり、簡潔なスプレッドシートにエクスポートしたりすることができる。
例示
プライマリーおよびセカンダリーにSOCへリンクするPTのリストのプログラム |
SOC 「眼障害」
HLGT 「視覚障害」
HLT 「視覚路障害」
PT 「視交差症候群」
PT 「視神経圧迫」(プライマリーSOC)
PT 「視神経障害」(プライマリーSOC)
PT 「視神経症」(プライマリーSOC)
PT 「中毒性視神経症」(プライマリーSOC)
PT 「視覚皮質萎縮」
PT 「視覚路障害」
7つの PTの内3つはSOC 「神経系障害」がプライマリーSOCである |
例示は、MedDRAバージョン23.0の用語を使用
Ø 利点:
多軸リンクはグループ用語の有用性を高める。この方法は3.2.1の項で述べたプライマリーSOCのみでの集約による制約を打開するものである。
Ø 限界:
一つのSOCもしくはHLGT/HLTに限定した表示のみであり、ある医学的状態に関連する全ての用語が包含されるとは限らない。
PTをプライマリーとセカンダリーのSOCで表示するこの方法では、用語を重複集計することとなる。
4.1 SMQとは
MedDRA標準検索式(SMQ)は安全性データの標準的な識別と検索を可能にする目的で開発された。
SMQは製薬企業と規制当局の代表で構成されているCIOMSのSMQ-WGとICH(MSSOとJMOを含む)の共同作業による成果物である。SMQは、目的とする医学的状態または関心領域に関係する一つ以上のSOCからのMedDRA用語のグループである。その用語グループには対象とする医学的状態あるいは関心領域に関連する徴候、症状、診断、症候群、身体所見、臨床検査および生理的検査データなどが含まれている。
MedDRAの利用者はあるSMQを利用する前に、そのSMQの内容を十分に理解し、アルゴリズムやウエイト付けのようなオプションを適切に利用するため、「MedDRA標準検索式(SMQ)手引書」を注意深く読むことが必要である。
4.2 SMQの利点
MedDRAを基本とした全ての検索式と同様、SMQの利用者はデータベースの特徴、データ変換方法、コーディングルール、あるいはMedDRAバージョンなどを含むいくつかの要素が検索に影響することを理解すべきである。詳細は3.1の項を参照。
Ø SMQ利用の利点には下記のものがある:
複数の治療領域にまたがって利用することが出来る。
検索式は検証されていて、再利用が可能である。
安全性情報の標準化された情報交換に利用できる。
一貫性のあるデータ検索が可能である。
MSSO/JMOによってメンテナンスされている。
SMQは全ての医学的概念あるいは安全性の問題をカバーしていない。
SMQは開発段階でテストされているとはいえ、進化するものであり、使用経験で改良されていくものである。
4.4 SMQの修正と組織独自の検索式
SMQの内容や構造に如何なる修正を加えた場合は、もはや“SMQ”と称するのは適切でなく、“SMQに基づく修正MedDRA検索式”と称されるべきである。詳細については5.1項のSMQの修正の項を参照のこと。
組織の特別なニーズに対応して作成された検索式は如何なる場合でもSMQと呼称されるべきではない。これは他のMedDRAユーザーが使用するICHで推奨しているSMQとの混同を確実に回避するためである。組織が作成する検索式の名称は、ICHが推奨するSMQと混同される恐れがない呼称であれば、何れであっても差し支えない。
4.5 SMQとMedDRAバージョン更新
それぞれのSMQは特定のMedDRAバージョンと関係している。SMQはMedDRAの各新バージョンの一部であり、MSSO/JMOによってメンテナンスされ、該当バージョンの用語に対応している。利用するSMQのバージョンは検索対象データのMedDRAバージョンと常に一致しているべきである。
MedDRAでコーディングされたデータを検索する場合は、常にMedDRAとSMQのバージョンを記録することが重要である。
MedDRAのバージョン更新時におけるSMQの変更には下記のものが含まれる(但し、これに限定されない)。
PTの追加
PTのインアクティブ化(不活化:即ち、SMQからの実質的な削除)
用語の範囲の変更(例えば、狭域から広域への変更)
SMQの再構成(例えば、SMQ内の階層位置の変更)
新規のSMQの開発
SMQに関する追加変更要請の詳細はMSSOの"Change Request Information"を参照されたい(付録の6.1項を参照)。各リリースバージョンの変更は新規バージョンの"What's New"文書(最新情報)に記述されている。(変更情報の蓄積は該当ASCIIファイルの "Term_addition_version" および "Term_last_modified_version"というフィールドに格納されている)。
JMO注)SMQを含むMedDRAの追加変更要請の詳細は「MedDRA/J利用の手引き」を参照のこと。また、SMQのASCIIファイルの詳細は「MedDRA/J ASCIIおよび差分ファイル情報」を参照のこと。
SMQのMedDRAバージョンと検索対象のMedDRAバージョンが不一致であると予期せぬ結果を招くことがあり得るため、バージョンは同一であるべきである。例えば、過去のバージョンのSMQをより新しいバージョンでコーディングされたデータに適用した場合、過去のバージョンのSMQには含まれていない用語でコーディングされたデータは検索されない。
例示
データコーディングとSMQのバージョンの不一致による結果 |
MedDRAバージョン23.0で「悪性乳房腫瘍(SMQ)」にPT 「ホルモン受容体陽性乳癌 (Hormone receptor positive breast cancer)」が追加された。このPTを含んでいないバージョン22.1のSMQをMedDRAバージョン23.0のデータベースに利用した場合、このPTでコーディングされたデータは検索されない。 |
例示は、MedDRAバージョン22.1および23.0の用語を使用
4.6 過去データの変換がSMQ利用に与える影響
他の用語集(例えば、COSTART)でコーディングされたデータを変換する方法もSMQを利用した結果に影響を与える。2.1.2項のデータ検索に及ぼすデータ変換方法の影響を参照のこと。
4.7 SMQの追加変更要請
SMQの有用性を改善する必要性があると感じた場合は、MSSO/JMOへの追加要請変更を提出することが奨められる。追加変更要請に際しては必要な理由(可能であれば裏付けるデータ)を添付すべきである。SMQの追加変更要請のMSSOでの処理は通常のMedDRA用語の処理より長期間を必要とすることがある。
追加変更要請の前に、ユーザーはSMQ手引書において、該当SMQの包含・除外基準を確認すべきである。
4.8 SMQの利用ツール
MSSOの検索ツール(デスクトップブラウザー、オンラインブラウザーおよびモバイルブラウザー)ではSMQの内容の検索と参照が可能で、その中にはSMQ記述(定義)および開発ノートなどの詳細も含まれる。
MSSOのブラウザーは両方ともSMQ分析機能を有しており、ユーザーはコード化されたデータセットをアップロードしてSMQをそれに適用できる。
全ての公表されているSMQに含まれている用語を展開したスプレッドシートがMedDRAあるいはJMOのWebsiteから入手できる(付録 6.1項を参照)。このスプレッドシートからユーザーは自由に用語を取り込み、検索ツールで転用することができる。SMQ関連のASCIIファイルの仕様は、各MedDRAバージョンで提供される「MedDRA Distribution File Format Document」で確認できる。
JMO注)JMOが提供する検索ツール(MedDRA/J Browser V4.0.xおよびオンラインブラウザー)でも同様のSMQの検索と参照は可能である。また、個々のSMQの内容を展開したスプレッドシートはJMOのWebsite(会員へのお知らせ-ドキュメントライブラリー)から取得できる。
SMQ利用を技術的に支援するいくつかのシステムツールがMedDRAのWebsiteに紹介されている。
JMO注)現時点では、日本国内で同様のリストの提供はない。
4.9 SMQの適用
SMQは、情報粒度が細かく独自の特性をもつMedDRAに対応して、関心ある特定の医学的状態を反映する全ての用語が確実に網羅されるよう開発されたツールである。
SMQの利用者は、最初に、問いかけられた質問に利用可能なSMQがあるかどうかをSMQのリストで確認すべきである。あるSMQが利用可能と考えられたら「SMQ手引書」の内容をチェックしてそのSMQの目的や定義を確認すべきである。同時にそのSMQに包含されている用語を確認することが望まれる。
選定したSMQをMedDRAでコーディングされたデータに適用した後に、検索結果(即ち、引き出されたデータ)を当初問いかけられた質問に照らし合わせて評価すべきである。検索結果のみではデータの評価は不十分であるかも知れない(例えば、発生頻度のみ)。SMQによって特定された症例の評価基準を決定して文書で記録することは良い方法と言える。
一般的には"ノイズ"が含まれるため、分析対象とするより多くの症例/事象が検索されるであろう。このことは"広域"検索の場合がより明らかであるが、"狭域"検索でも一般的に観察される(4.10.1項参照)。
4.9.1 臨床試験
SMQを安全性の概略がまだ十分に明確ではない時点での臨床試験、特に集積されたデータに用いることはできる。この場合、全てではないが多くのSMQを、可能であればルーチン的に用いることができる。
逆に、前もって特定されている関心の対象(例えば、非臨床試験データあるいは薬効群から)を確認するため、関連するSMQを用いることもできる。
例示
目的とする安全性の研究 |
目的とする安全性試験のデータ分析方法を検討する場合は、対象とする事象を集積するために、特定のSMQの狭域検索用語を適用することを検討しても良い。 |
4.9.2.1 焦点を絞った検索
特定のSMQあるいはSMQの組合せを利用することによって、更なる医学的評価が必要とされる症例を検索することができる
例示
新たに想定された安全性シグナル |
新規のHIV治療薬についての安全性シグナルとして"膵炎"が浮かびあがった。SMQ 「急性膵炎」をデータに適用して検索できる。 |
4.9.2.2 シグナル検出
SMQに包含される全てのPTのセットをシグナル検出に適用できるかもしれない。あるいは、シグナル値の希釈を少なくするために、狭域検索用語の使用、あるいはより特定した階層のSMQ(即ち、特定のサブSMQ)を適用することを考慮するべきかもしれない。
4.9.2.3 個別症例での警告
SMQは緊急評価を必要とする症例の発生を警告する"watch list"(例えば、自動化された通知システムの構築)として利用できるかもしれない。
例示
個別症例での警告 |
ある医学的問題が合意されたリスクマネージメントプランの一部として規制当局に連絡が必要な対象とされている。関連するSMQの狭域検索用語あるいは特定の階層レベルSMQが対象となる可能性のある症例を特定することに利用できるかもしれない。 |
4.9.2.4 定期報告
SMQは定期的な安全性報告において特定の安全性問題を継続的に評価するために関連する症例を集約することに適用できる可能性がある。また、これ以外にSMQは定期報告において、その他のルーチンな集約データ(例えば、効果欠如の報告)の評価にも有用かもしれない。
4.10 SMQの検索オプション
SMQの中には、検索をより特異的にするオプションを有しているものがある。最も一般的なものは「狭域」および「広域」検索用語を使用するオプションである。広域検索は「広域」と「狭域」の両方の検索用語を含むと定義されている。
階層構造(即ち、一つ以上のサブ検索を持つこと)を有するSMQもある。その他にはアルゴリズムを持つものがあり、その1例(全身性エリテマトーデス(SMQ))では徴候、症状、臨床検査結果にウエイト付けをして症例特定を支援している。
4.10.1 狭域検索と広域検索
ほとんどのSMQは、「狭域」と「広域」 のPTのサブセットを持っている。「狭域」のPT用語は、関心の対象となった事象を特定するより高い蓋然性(高特異性)を有しており、一方「広域」用語は、これに加えて可能性がある事象を特定する(感度が高い)ことを意図したものである。広域用語によって検索された事象は、更なる評価によって、関心の対象ではないとされる可能性がある。ユーザーは提起されている課題にとって最も適切な検索方式(狭域あるいは広域)を選択することができる。図表12.は狭域検索と広域検索の出力例である。
対象とする薬剤が開発の初期段階、あるいは市販直後である場合は、広域検索の適用が推奨されるかもしれない。
例示
広域検索の適用 |
もし「乳酸アシドーシス(SMQ)」を用いて提起された乳酸アシドーシスのシグナルを評価する場合、狭域用語は明確に診断され報告された事象を特定することができる、しかし、徴候や症候として報告された事象は検索されないであろう。もし、明確な診断を伴わない症例(しかし主として徴候および症候が報告されている)を検索する必要があると考えるのであれば、広域検索(即ち、狭域検索用語および広域検索用語)を適用すべきである。 |
4.10.2 階層構造
かなりの数のSMQは階層構造(特異性で分割された一つ以上のレベルのサブSMQ)を持っている。ユーザーは提起された課題に最も適切な検索あるいはサブSMQの組合せを選択することが可能である。
「SMQ手引書」には、階層構造を持つSMQの適切な利用をガイドする「説明の注釈」が記載されている。階層構造を持つ「造血障害による血球減少症(SMQ)」の例示を下記に図示する。
造血障害による血球減少症 (SMQ) | ||||||||||
造血障害による 赤血球減少症 (SMQ) | 造血障害による 白血球減少症 (SMQ) | 造血障害による 血小板減少症 (SMQ) | 造血障害による2種 以上の血球減少症 (SMQ) |
例示
階層構造を持つSMQの利用 |
対象とする医学概念は血小板減少症である。「造血障害による血球減少症(SMQ)」は他の造血細胞系の減少(例えば、「造血障害による白血球減少症(SMQ)」)のサブSMQが含まれているため、非常に広範である。従って、この場合はサブSMQの「造血障害による血小板減少症(SMQ)」を選択することが適切である。 |
4.10.3 アルゴリズムを持つSMQ
アルゴリズムは用語の組合せを提供するが、それらが同一症例で検索された場合は、単独で広域用語が検索された場合より高度に対象の症例が特定されたということになる(下記の表を参照)。アルゴリズムを持つSMQの広域用語はカテゴリーに分割されていて、器官特有の徴候や症状、臨床検査用語などにグループ化されている(広域用語はB、C、Dなどにカテゴリー化されている)。従って、アルゴリズムの利用は多量の"ノイズ"(即ち該当しない症例)を減少させる。
アルゴリズムを持つSMQをアルゴリズムなしに利用(即ち、単に狭域と広域検索として適用)した結果はアルゴリズムを利用した結果とは異なる。
例示
アルゴリズムを有するSMQの例示「アナフィラキシー反応(SMQ)」* | ||
カテゴリーB上気道/ 呼吸器系 |
カテゴリーC血管浮腫/ 蕁麻疹 他 |
カテゴリーD心血管系/ 低血圧 |
PT 「急性呼吸不全」 Acute respiratory failure |
PT 「アレルギー性浮腫」 Allergic oedema |
PT 「血圧低下」 Blood pressure decreased |
PT 「気管支浮腫」 Bronchial oedema |
PT 「紅斑」 Erythema |
PT 「収縮期血圧低下」 Blood pressure systolic decreased |
PT 「喘息」 Asthma |
PT 「血管浮腫」 Angioedema |
PT 「拡張期血圧低下」 Blood pressure diastolic decreased |
アルゴリズム
•カテゴリーA:狭域検索用語(上記の表には含まれていない)を持つ症例 •あるいは、「カテゴリーBの用語」および「カテゴリーCの用語」の両方を持つ症例 •あるいは、「カテゴリーBの用語」または「カテゴリーCの用語」のいずれかと、「カテゴリーDの用語」の両者を持つ症例 |
*表中には各カテゴリーの一部の用語をリストしている
SMQ「全身性エリテマトーデス」はアルゴリズムを持つSMQで、同時に用語に重み付けを与えており(例えば、PT 「胸水」は"3")、ウエイトの合計が"6"を超えると該当症例であることを示唆するものである。
全てのソフトウエアがアルゴリズムSMQの機能をサポートしている訳ではない。
4.11 SMQとMedDRAのグループ用語
MedDRAのグループ用語(HLT、HLGT)を利用した検索結果は関連するSMQを利用した検索結果とは異なるかもしれない。
例示
SMQとグループ用語の比較 |
不整脈が検証すべき対象である(例えば、全データからのプライマリーSOCでの評価結果で)。HLGT 「不整脈」の下位のPTのみで検索を実施したものと、「不整脈(SMQ)」を使用して検索した結果とを比較すると、HLGTの場合よりSMQを使用した場合の方が多くの症例を検索するであろう。それはSMQには臨床検査などの他のSOCからの用語が含まれているからである。 |
MedDRAは上述のとおり種々の検索ツールを提供している。しかしながら、個別対応の検索が必要とされる状況はありえる。
5.1 SMQに基づく修正MedDRA検索式
SMQは少しでも修正すると標準ではなくなるので、やむを得ない理由のない限りSMQに包含されている用語や構造を変更してはならない(4.4項参照)。
いかなる修正であれ、SMQを修正した場合は"SMQに基づく修正MedDRA検索式"と呼ぶべきである。オリジナルSMQからのいかなる修正点も記録しておくべきである。
SMQに基づく修正MedDRA検索式を継続的に利用するのであれば、バージョン更新とその検索式のメンテナンスは修正を実施した組織の責任である。
例示
例示:SMQに基づく修正MedDRA検索式 | |
PTの追加が必要な場合 | ある製品の認知症に関する安全性のシグナルを調査している場合で「認知症(SMQ)」を利用することを望んでいる。特定の製品についてはPT 「注意力障害」を追加する必要があるかもしれない。 |
PTを削除する場合 | 低血圧と失神が良く知られている抗精神病薬のQT延長について調査されている。「トルサード ド ポアント/QT延長(SMQ)」の広域検索を利用する際に、検索結果の"ノイズ"を防止するためPT 「失神」を除外したいと思うかもしれない。 |
SMQ用語の範囲(狭域あるいは広域)を変更する場合 | 高血糖と糖尿病の可能性についてある医薬品を調査している。SMQ「高血糖/糖尿病の発症」にはPT:「インスリン必要量の増加」が広域検索用語として含まれている。この検索においてはPT:「インスリン必要量の増加」を狭域検索用語として含めることが有用かも知れない。 |
5.2 個別対応(Customized)検索式
MedDRAでコーディングされたデータに個別対応検索式を作成する場合には多くの考慮すべき事項がある。
個別対応検索式作成責任者には下記の要件が必要である。
o 医学的知識を持っていること
o MedDRAの構造と特性(例えば、階層構造、多軸性)とMedDRAのグループ全般の内容(SOC、HLGT、HLT)の知識があること
o 検索対象データの特徴と構造を理解していること
検索の特異性を定義すべきである
最初は対象の事象に関連するSOCに焦点をあてるべきである。例えば、腎臓の状態に関する個別対応検索はSOC 「腎および尿路障害」から開始すべきである。
多軸構造をとっていないSOC(「臨床検査」、「外科および内科処置」、「社会環境」)は常に確認が必要である。加えて、特定の臓器を代表しないSOC(例えば、「一般・全身障害および投与部位の状態」、「傷害、中毒および処置合併症」、「妊娠、産褥および周産期の状態」)の中の関連用語を調べることは有用かもしれない。
下記の方法で検索用語を特定することが有用である。
o MedDRAを"Bottom-up"方式で関連する用語を特定する(例えば、最初にLLTやPTレベルで関連用語を見つけ、上層展開する)
o MedDRAを"Top-down"方式で関連する用語で特定する(即ち、SOCレベルから始めて階層を介して下層展開する)
多軸の関連付けのある用語ではセカンダリーリンクから追加の関連検索用語を見つけることを考慮されたい、例えば、PT 「呼吸困難」はプライマリーリンクとして他の症状と共にSOC 「呼吸器、胸郭および縦隔障害」にあるが、同時に他の心臓関連の症状のPTと共にSOC「心臓障害」にも見られる。
可能な場合はグループ用語(HLT、HLGT)を取り込む(2.5.1項参照)。
通常、検索式はPTとグループ用語で記述される。非常に特殊な概念(例えば、菌種)が必要でなければ、検索式の組み立てにLLTを利用することは避ける。
将来の使用のために個別対応検索式を保存することを考慮すること、即ち、MedDRAのバージョン変更によるメンテナンスが必要となる。
他のMedDRAユーザーにも有用である可能性がある個別対応検索式は、新たなSMQの開発の可能性があるので、MSSOへの提出(追加変更要請として)が考えられる。
下記の資料およびツールはMedDRA website(www.meddra.org)で利用できる。
MedDRA Term Selection: Points to Consider document
MedDRA Term Selection: Points to Consider Condensed Version
MedDRA Data Retrieval and Presentation: Points to Consider Condensed Version
MedDRA Points to Consider Companion Document
MedDRA Introductory Guide
Introductory Guide for Standardised MedDRA Queries (SMQs)
MedDRA Change Request Information document
MedDRA Web-based Browser *
MedDRA Mobile Browser *
MedDRA Desktop Browser
MedDRA Version Report (lists all changes in new version) *
MedDRA Version Analysis Tool (compares any two versions) *
MedDRA Best Practices
Transition Date for the Next MedDRA Version
Production SMQ spreadsheet*
List of system tools that support SMQs
* 印はアクセスにMSSOのユーザー ID とPW が必要
下記の資料はICH website (www.ich.org)で閲覧できる。
ICH E2E: Pharmacovigilance Planning
下記の資料はCIOMS website (www.cioms.ch)から入手できる。
Development and Rational Use of Standardised MedDRA Queries (SMQs): Retrieving Adverse Drug Reactions with MedDRA. Second edition
JMO注)JMOから提供している下記の資料およびツールはJMOウェブサイト(https://www.pmrj.jp/jmo/)(JMOから提供されるIDとPWが必要)から入手できる。
MedDRA用語選択:考慮事項
MedDRA考慮事項:コンパニオンドキュメント
ICH 国際医薬用語集(MedDRA)バージョン23.0手引書
MedDRA標準検索式(SMQ)バージョン23.0手引書
用語の追加・変更要請(Change Request; CR)の手順
MedDRA/J V23.0改訂情報(日本語情報を中心として)
オンラインMedDRA/J検索ツール
MedDRA/J Browser(JMO開発)
MedDRA Web-Based Browser(WBB)
MedDRA Desktop Browser(MSSO開発)
MedDRA Version 解析ツール(MVAT)
図表1.他の用語集では単一の概念で、MedDRAでは複数のPTで表現される事象
他の用語集のPT | 事象数 | MedDRA バージョン23.0のPT | 事象数 |
感染 (Infection) |
15 | 上気道感染(Upper respiratory tract infection) | 7 |
鼻咽頭炎(Nasopharyngitis) | 2 | ||
感染 (Infection) | 1 | ||
下気道感染(Lower respiratory tract infection) | 4 | ||
皮膚感染 (Skin infection) | 1 | ||
腹痛 (Abdominal pain) |
9 | 腹痛 (Abdominal pain) | 4 |
上腹部痛 (Abdominal pain upper) | 3 | ||
腹部圧痛 (Abdominal tenderness) | 2 | ||
事故による外傷 (Accidental injury) |
4 | 損傷 (Injury) | 1 |
皮膚裂傷 (Skin laceration) | 1 | ||
靱帯捻挫 (Ligament sprain) | 1 | ||
背部損傷 (Back injury) | 1 |
例示は、MedDRAバージョン23.0の用語を使用
図表2.類似した医学的状態が、臨床検査SOCと障害SOCに跨る複数のMedDRA用語でコーディングされる例示
他の用語集 | MedDRA バージョン23.0 | |||
報告事象(%) | コード用語(%) | Body System/ SOC (%) |
PT (%) | SOC (%) |
高血糖 (4.1) | 高血糖 (10.5) |
代謝および 栄養障害 (10.5) |
高血糖 (4.1) | 代謝および 栄養障害(4.1) |
血糖増加 (2.7) | ||||
グルコース増加 (2.2) | 血中ブドウ糖 増加 (6.4) |
臨床検査 (6.4) |
||
血糖高値 (1.0) | ||||
グルコースの増加 (0.5) |
例示は、MedDRAバージョン23.0の用語を使用
図表3.MedDRAのバージョン更新-PTの格下げ-による影響
基本語(PT) | 事象数 | 備考 | |
バージョン 22.1 |
バージョン 23.0 |
||
坐骨骨折 | 15 | 0 【PTから降格】 |
バージョン22.1では「坐骨骨折」はPTであったが、バージョン23.0ではPT「骨盤骨折」の下位のLLTに格下げされた。 |
骨盤骨折 | 5 | 20 |
例示は、MedDRAバージョン22.1および23.0の用語を使用
SOC(器官別大分類) |
発現件数 | 致死的転帰の件数 | |
HLGT |
|||
HLT |
PT | ||
神経系障害 |
|||
精神的機能障害 |
|||
精神的機能障害 (認知症および記憶喪失を除く) |
注意力障害 | 1 | 0 |
運動障害(パーキンソニズムを含む) |
|||
ジスキネジーおよび 運動異常症NEC |
精神運動亢進 | 2 | 0 |
振戦(先天性振戦を除く) |
振戦 | 3 | 0 |
神経学的障害NEC |
|||
意識障害NEC |
傾眠 | 1 | 0 |
神経学的徴候および症状NEC |
浮動性めまい | 1 | 0 |
発作(亜型を含む) |
|||
発作およびてんかん発作NEC |
痙攣 | 2 | 0 |
SOC 神経系障害 合計 | 10 | 0 | |
精神障害 |
|||
不安障害および不安症状 |
|||
不安症状 |
アクティベーション症候群 | 1 | 0 |
激越 | 2 | 0 | |
不安 | 2 | 0 | |
ストレス | 1 | 0 | |
抑うつ性気分障害 |
|||
うつ病性障害 |
うつ病 | 1 | 0 |
思考障害および認知障害 |
|||
思考障害 |
思考異常 | 1 | 0 |
統合失調症およびその他の精神障害 |
|||
精神病性障害NEC |
精神病性障害 | 1 | 0 |
睡眠障害 |
|||
入眠および睡眠維持障害 |
不眠症 | 1 | 0 |
SOC 精神障害 合計 | 10 | 0 |
プライマリーSOCの表示順はMedDRAバージョン17.1による。注:PTには多軸のものもあるが、本表ではプライマリーSOCにリンクするもののみを表示している
図表5.MedDRAのSOC順-国際合意順と英語アルファベット順(バージョン23.0)
MedDRA SOC英語アルファベット順 |
MedDRA SOC国際合意順 |
血液およびリンパ系障害 | 感染症および寄生虫症 |
心臓障害 | 良性、悪性および詳細不明の新生物(嚢胞およびポリープを含む) |
先天性、家族性および遺伝性障害 | 血液およびリンパ系障害 |
耳および迷路障害 | 免疫系障害 |
内分泌障害 | 内分泌障害 |
眼障害 | 代謝および栄養障害 |
胃腸障害 | 精神障害 |
一般・全身障害および投与部位の状態 | 神経系障害 |
肝胆道系障害 | 眼障害 |
免疫系障害 | 耳および迷路障害 |
感染症および寄生虫症 | 心臓障害 |
傷害、中毒および処置合併症 | 血管障害 |
臨床検査 | 呼吸器、胸郭および縦隔障害 |
代謝および栄養障害 | 胃腸障害 |
筋骨格系および結合組織障害 | 肝胆道系障害 |
良性、悪性および詳細不明の新生物(嚢胞およびポリープを含む) | 皮膚および皮下組織障害 |
神経系障害 | 筋骨格系および結合組織障害 |
妊娠、産褥および周産期の状態 | 腎および尿路障害 |
製品の問題 | 妊娠、産褥および周産期の状態 |
精神障害 | 生殖系および乳房障害 |
腎および尿路障害 | 先天性、家族性および遺伝性障害 |
生殖系および乳房障害 | 一般・全身障害および投与部位の状態 |
呼吸器、胸郭および縦隔障害 | 臨床検査 |
皮膚および皮下組織障害 | 傷害、中毒および処置合併症 |
社会環境 | 外科および内科処置 |
外科および内科処置 | 社会環境 |
血管障害 | 製品の問題 |
図表5.MedDRAのSOC順-英語アルファベット順と国際合意順 (バージョン23.0英語版)
英語アルファベット順 |
国際合意順 |
Blood and lymphatic system disorders | Infections and infestations |
Cardiac disorders | Neoplasms benign, malignant and unspecified (incl cysts and polyps) |
Congenital, familial and genetic disorders | Blood and lymphatic system disorders |
Ear and labyrinth disorders | Immune system disorders |
Endocrine disorders | Endocrine disorders |
Eye disorders | Metabolism and nutrition disorders |
Gastrointestinal disorders | Psychiatric disorders |
General disorders and administration site conditions |
Nervous system disorders |
Hepatobiliary disorders | Eye disorders |
Immune system disorders | Ear and labyrinth disorders |
Infections and infestations | Cardiac disorders |
Injury, poisoning and procedural complications | Vascular disorders |
Investigations | Respiratory, thoracic and mediastinal disorders |
Metabolism and nutrition disorders | Gastrointestinal disorders |
Musculoskeletal and connective tissue disorders | Hepatobiliary disorders |
Neoplasms benign, malignant and unspecified (incl cysts and polyps) |
Skin and subcutaneous tissue disorders |
Nervous system disorders | Musculoskeletal and connective tissue disorders |
Pregnancy, puerperium and perinatal conditions | Renal and urinary disorders |
Product issues | Pregnancy, puerperium and perinatal conditions |
Psychiatric disorders | Reproductive system and breast disorders |
Renal and urinary disorders | Congenital, familial and genetic disorders |
Reproductive system and breast disorders | General disorders and administration site conditions |
Respiratory, thoracic and mediastinal disorders | Investigations |
Skin and subcutaneous tissue disorders | Injury, poisoning and procedural complications |
Social circumstances | Surgical and medical procedures |
Surgical and medical procedures | Social circumstances |
Vascular disorders | Product issues |
図表7. 図表の表示例(プライマリーおよびセカンダリー毎の頻度)
System Organ Class | Number of All Reactions* |
Reactions* (% of total) |
Number of Reactions* where outcome of AI report was fatal |
Gastrointestinal disorders | 1 | 1.92 % | 0 |
General disorders and administration site conditions | 10 | 19.23 % | 0 |
Hepatobiliary disorders | 2 | 3.83 % | 0 |
Immune system disorders | 1 | 1.92 % | 0 |
Infections and infestations | 1 | 1.92 % | 0 |
Investigations | 7 | 13.46 % | 0 |
Metabolism and nutrition disorders | 1 | 1.92 % | 0 |
Musculoskeletal and connective tissue disorders | 1 | 1.92 % | 0 |
Nervous system disorders | 10 | 19.23 % | 0 |
Psychiatric disorders | 10 | 19.23 % | 0 |
Renal and urinary disorders | 2 | 3.85% | 0 |
Respiratory, thoracic and mediastinal disorders | 2 | 3.85% | 0 |
Skin and subcutaneous tissue disorders | 4 | 7.69 % | 0 |
Total Number of Reactions: | 52 | 100 % | 0 |
図表9a. 各対の上横棒は消費者からの報告数(青)、下の横棒は医療従事者からの報告数(赤)を示す(集団1)
図表9b. 各対の上横棒は消費者からの報告数(青)、下の横棒は医療従事者からの報告数(赤)を示す(集団2))
図表11. プログラムによるプライマリーおよびセカンダリーSOCによる出力
SOC 「感染症および寄生虫症」
プライマリーSOCによる集計
有害事象(MedDRA v23.0) | 25mg薬剤群 (N=44) | プラセボ群 (N=15) |
SOC「感染症および寄生虫症」 | 14 (31.8%) | 4 (26.7%) |
PT 「上気道感染」 |
5 | 2 |
PT 「副鼻腔炎」 |
3 | 0 |
PT 「尿路感染」 |
2 | 1 |
PT 「耳感染」 |
2 | 0 |
PT 「ウイルス感染」 |
2 | 0 |
PT 「気管支炎」 |
1 | 0 |
PT 「インフルエンザ」 |
1 | 0 |
PT 「限局性感染」 |
0 | 1 |
PT 「下気道感染」 |
1 | 0 |
PT 「肺炎」 |
1 | 0 |
PT 「歯膿瘍」 |
1 | 0 |
セカンダリーSOCによる集計 (上記と同じデータでの集計)
有害事象(MedDRA v23.0) | 25mg薬剤群 (N=44) | プラセボ群 (N=15) |
SOC 「呼吸器、胸郭および縦隔障害」 | ||
PT 「上気道感染」 |
5 | 2 |
PT 「副鼻腔炎」 |
3 | 0 |
PT 「気管支炎」 |
1 | 0 |
PT 「インフルエンザ」 |
1 | 0 |
PT 「下気道感染」 |
1 | 0 |
PT 「肺炎」 |
1 | 0 |
SOC 「感染症および寄生虫症」 | ||
PT 「ウイルス感染」 |
2 | 0 |
PT 「限局性感染」 |
0 | 1 |
SOC 「腎および尿路障害」 | ||
PT 「尿路感染」 |
2 | 1 |
SOC 「耳および迷路障害」 | ||
PT 「耳感染」 |
2 | 0 |
SOC 「胃腸障害」 | ||
PT 「歯膿瘍」 |
1 | 0 |
例示は、MedDRAバージョン23.0の用語を使用
図表12. 狭域(Narrow)検索および広域(Broad)検索の結果
Asthma/bronchospasm (SMQ) Cases - Narrow Search (since 1-JAN-2008) |
|||
ID | MedDRA_PT | REPORT_VERBATIM | DATE_CREATED |
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
|
|||
045 | Asthma | Asthma attack | 01-APR-2008 |
063 | Asthma | Severe asthma | 10-JUN-2008 |
060 | Asthma exercise induced | Asthma when exercising | 30-MAY-2008 |
091 | Bronchospasm | Spasms, bronchial | 12-AUG-2008 |
074 | Bronchospasm | Bronchoconstriction | 03-JUL-2008 |
100 | Bronchial hyperreactivity | Airways hyperreactive | 20-SEP-2008 |
069 |
Bronchial hyperreactivity |
Reactive airways disease |
21-JUN-2008 |
Asthma/bronchospasm (SMQ) Cases - Broad Search (since 1-JAN-2008) |
|||
ID | MedDRA_PT | REPORT_VERBATIM | DATE_CREATED |
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
|
|||
023 | Allergic respiratory disease | Respiratory (allergy) disorder | 18-FEB-2008 |
045 | Asthma | Asthma attack | 01-APR-2008 |
063 | Asthma | Severe asthma | 10-JUN-2008 |
060 | Asthma exercise induced | Asthma when exercising | 30-MAY-2008 |
016 | Bronchial obstruction | Bronchial obstruct | 16-JAN-2008 |
039 | Bronchial obstruction | Bronchus obstruction | 14-MAR-2008 |
091 | Bronchospasm | Spasms, bronchial | 12-AUG-2008 |
074 | Bronchospasm | Bronchoconstriction | 03-JUL-2008 |
100 | Bronchial hyperreactivity | Airways hyperreactive | 20-SEP-2008 |
069 | Bronchial hyperreactivity | Reactive airways disease | 21-JUN-2008 |
088 | Obstructive airways disorder | Obstructive airways disorder | 29-JUL-2008 |
049 | Obstructive airways disorder | Obstructed airways dis. | 20-APR-2008 |
022 | Wheezing | Wheeze | 16-FEB-2008 |
031 | Wheezing | Wheezes | 02-MAR-2008 |
106 | Wheezing | Wheezing | 28-SEP-2008 |
046 |
Wheezing |
Wheezing (acute) |
06-APR-2008 |