MedDRA 用語選択:考慮事項

第一章 はじめに
1.1 本文書の目的
1.2 MedDRAの活用
1.3 本文書の利用法
1.4 好ましい選択肢
1.5 MedDRAブラウザー
第二章 用語選択の一般的原則
2.1 原データの質
2.2 品質保証
2.3 MedDRAを変更してはならない
2.4 常にLLTを選択する
2.5 カレントLLTを選択する
2.6 用語の追加要請
2.7 医学的判断の必要性
2.8 複数の用語の選択
2.9 階層構造の確認
2.10 報告された情報をすべて用語選択するが、情報の追加は行わない
第三章 用語選択のポイント
3.1 確定診断、暫定的診断および徴候・症状
3.2 死亡およびその他の転帰
3.2.1 副作用/有害事象に伴う死亡
3.2.2 死亡が唯一の情報
3.2.3 重要な臨床情報を含む死亡用語
3.2.4 その他の転帰(死亡以外)
3.3 自殺および自傷
3.3.1 過量投与が報告された場合
3.3.2 自傷が報告された場合
3.3.3 自殺既遂
3.4 矛盾/不明瞭/曖昧な情報
3.4.1 矛盾する情報
3.4.2 不明瞭な情報
3.4.3 曖昧な情報
3.5 組合せ用語
3.5.1 診断と徴候・症状
3.5.2 組合せの一方が、より詳細な状況を表す場合
3.5.3 組合せ概念を表すMedDRA用語がある場合
3.5.4 複数のMedDRA用語の選択が良い場合
3.5.5 既存の医学的状態と共に報告された事象
3.6 年齢と事象の特定
3.6.1 年齢と事象を特定したMedDRA用語がある場合
3.6.2 年齢と事象を特定したMedDRA用語がない場合
3.7 身体部位と事象の特定
3.7.1 身体部位と事象を特定したMedDRA用語がある場合
3.7.2 身体部位と事象を特定したMedDRA用語がない場合
3.7.3 複数の身体部位に発現した事象
3.8 感染部位特異性と感染微生物特異性
3.8.1 MedDRA用語に微生物名と感染部位を含む用語がある場合
3.8.2 MedDRA用語に微生物名と感染部位を含む用語がない場合
3.9 既存状態の変化
3.10 妊娠中、授乳中の曝露
3.10.1 母体での事象
3.10.2 子供・胎児での事象
3.11 先天性用語
3.11.1 先天性という状態
3.11.2 先天性でない/出生時にみられていない状態
3.12 新生物
3.12.1 悪性度を推測しない
3.13 内科的/外科的処置
3.13.1 処置のみが報告された場合
3.13.2 処置と診断が報告された場合
3.14 臨床検査
3.14.1 副作用/有害事象としての検査結果
3.14.2 診断と一致する検査結果
3.14.3 診断と一致しない検査結果
3.14.4 包括された検査結果
3.14.5 検査項目を表す用語
3.15 投薬・投与過誤、偶発的曝露および職業性曝露
3.15.1 投薬・投与過誤
3.15.2 偶発的曝露および職業性曝露
3.16 誤用、乱用および嗜癖
3.16.1 誤用
3.16.2 乱用
3.16.3 嗜癖
3.17 製品を介する感染因子の伝播
3.18 過量投与,毒性および中毒
3.18.1 臨床的影響を伴う過量投与
3.18.2 臨床的影響を伴わない過量投与
3.19 医療機器用語
3.19.1 臨床的影響を伴う医療機器に関連する事象
3.19.2 臨床的影響を伴わない医療機器に関連する事象
3.20 薬物相互作用
3.20.1 相互作用と特定された報告
3.20.2 相互作用と特定されない報告
3.21 「副作用なし」および「正常」の用語
3.21.1 副作用なし
3.21.2 「正常」用語
3.22 予期しない治療効果
3.23 効果の変化
3.23.1 効果の欠如
3.23.2 効果の欠如を推測しない
3.23.3 効果の増大、低下、延長
3.24 社会環境
3.24.1 社会環境用語の使い方
3.24.2 犯罪、虐待などの不法行為
3.25 医学的または社会的履歴
3.26 適応症
3.26.1 医学的状態
3.26.2 複数の適応症
3.26.3 遺伝子マーカーまたは遺伝学的異常の適応症
3.26.4 防止と予防
3.26.5 適応症としての処置、診断のための検査
3.26.6 補給および補充療法
3.26.7 適応症の報告なし
3.27 適応外使用
3.27.1 適応症として報告された適応外使用
3.27.2 副作用/有害事象を伴って報告された適応外使用
3.28 製品品質の問題
3.28.1 臨床的影響を伴う製品品質の問題
3.28.2 臨床的影響を伴わない製品品質の問題
3.28.3 製品品質の問題と投薬過誤
第四章 付録
4.1 バージョン管理
4.1.1 バージョン管理の方法
4.1.2 新バージョン導入のタイミング
4.2 参考情報へのリンク
4.3 ICH PTC-WGのメンバー
4.3.1 現在のメンバー
4.3.2 過去のメンバー




 

MedDRA® 用語選択:

考慮事項

ICH活動で作成されたMedDRAユーザー
のためのガイド

公表版4.6
(MedDRA Version 16.1対応)

 

 

 

2013年10月1日


免責および著作権に関する事項
本文書は著作権によって保護されており、如何なる場合であっても文書中にICHが版権を有することを明記することによって公有使用を許諾するものであり、複製、他文書での引用、改作、変更、翻訳または配布することができる。本文書を多少とも改作、変更あるいは翻訳する場合には、原文書の変更あるいは原文書に基づくものであると、明確に表示、区分あるいは他の方法で識別できる合理的な手順を踏まえなければならない。原文書の改作、変更あるいは翻訳がICHによる推奨、あるいは後援するものであるという印象は如何なるものであっても避けなければならない。 本資料は現状のまま提供され、一切の保証を伴わない。ICHおよび原文書著者は、本文書を使用することによって生じる如何なる苦情、損害またはその他の法的責任を負うものではない。 上記の使用許可は、第三者組織によって提供される情報には適用されない。したがって、第三者組織において著作権の対象である本文書を複製する場合は、本著作権者の承諾を得なければならない。

© 本資料の著作権はICH事務局(IFPMA内)にある。


本資料の日本語版はICHのPTC-WGの日本国内メンバーの協力を得て、
JMO事業部が翻訳したものである。

 


第一章 はじめに
ICH国際医薬用語集(MedDRA)は、ヒトに用いられる医療用製品に関する規制情報を共有するという特定の用途を目的に作成されたものである。しかし、報告された症状、徴候、疾患などに対する用語選択に際して、ユーザーの利用に一貫性がなければ、MedDRAを使用したとしても、コーディングされたデータの交換に調和ある効果は期待できない。
本文書「MedDRA Term Selection: Points to Consider」はICHの活動の一環としてMedDRAユーザーのために作成されたガイドであり、ICHの運営委員会の指示によって設けられたワーキンググループにより作成およびメンテナンスが行われている。MedDRAの改訂に伴って更新される予定でありMedDRAに付随する文書である。
ワーキンググループメンバーは、EU、日本、米国の規制当局および製薬企業の代表さらにカナダ規制当局、MSSO、JMOの代表で構成されている( 付録4.3項 メンバー表 参照)。

1.1 本文書の目的

本文書の目的は、用語選択の正確性と一貫性を向上させることにある。
MedDRAを利用する組織において、用語選択の方法、品質保証の手順をそれぞれのコーディングガイドラインとして文書化することが推奨され、その基本的考え方は本文書「Term Selection: Points to Consider」と一致している必要がある。

用語選択の一貫性は、MedDRAを用いたデータを世界的に共有する際に医学的な正確性を促進することとなる。同時にこのことは、学会、民間企業および規制当局などの間で共有される安全性データの共通理解を促進するものになると思われる。本文書は、医療従事者や研究者をはじめ、規制対象の製薬企業業界*以外の関連団体が使用する可能性もある。
本文書は企業と規制当局双方にとって用語選択のためのアドバイスを提供することを意図して作成されたものである。例示は、すべての地域の規制状況あるいは実情を反映したものではないかもしれない。本文書は、各規制当局への報告の必要条件やデータベース関連事項を解説することを目的としたものではない。今後、MedDRA使用の経験が増え、また、MedDRAが改訂されるに従い、内容の変更が行われるであろう。
*原文はregulated biopharmaceutical industry

1.2 MedDRAの活用
本書は副作用/有害事象(AR/AE*)、医療機器関連の事象、製品品質問題、投薬過誤、曝露、医療歴、社会的履歴、臨床検査、誤用および乱用、適応外使用、適応症に関する用語選択について記述している。MedDRAの構造は上記のような報告を医学的に意味のあるグループ化を行い、安全性データの分析を促進することを可能とする。また、MedDRAはAR/AEデータを報告書の形式(表、ラインリストなど)にまとめるために、あるいは同様なAR/AEの頻度計算、さらに、適応症、臨床検査、医学的、社会的履歴などのAR/AEに関連したデータの抽出や分析にも利用できる。
*本書ではAR/AE(adverse reactions/adverse events)という表記を用いている

1.3 本文書の利用法
本文書がすべての用語選択の状況に対応できるものではない。本文書の利用にあたっては医学的な判断および安全性情報の取扱いに関する一般的な知識が必要である。
本文書はMedDRAのトレーニングに代わるものではない。ユーザーは前もってMedDRAの内容および構造についての知識を持っていることが必須である。
MedDRA用語の最適な選択のために「ICH国際医薬用語集(MedDRA)手引書」(付録4.2項参照)を参照されたい。

1.4 好ましい選択肢
用語選択に幾つかの可能性がある例では、好ましい選択肢(Preferred option)を示している。
「好ましい選択肢」は、ユーザーがその選択肢を用いることを強制するものではない。
しかし、同一組織内では、どの選択肢を採用するかは統一したものであることが必要である。

1.5 MedDRAブラウザー
MSSOとJMOは用語検索、およびMedDRAの内容閲覧のための2種類のブラウザー(デスクトップ型、Web オンライン型)を提供している。(付録4.2項参照)これらのツールはユーザーにとって用語選択の有用な道具となるであろう。

第二章 用語選択の一般的原則

2.1 原データの質
オリジナル情報の質はデータ出力に直接影響する。不明瞭なデータ、矛盾したデータ、あるいは不可解なデータについては、それらの明確化を報告者に求めることが必須である。情報の明確化ができなかった場合には、本文書の「項目3.4 矛盾/不明瞭/曖昧な情報」を参照されたい。

2.2 品質保証
一貫した用語選択を推進するために、各組織は用語選択の方法、品質保証の手順をそれぞれのコーディングガイドラインとして文書化することが推奨されており、その基本的考え方は本文書と一致している必要がある。
データ収集のための様式を慎重にデザインするとともに、臨床試験担当医師、医薬情報担当者など、データ収集過程に携わる者に対して教育を行うことによって、より明確なデータを収集することが可能になる。
用語選択結果は適任者(医学的背景あるいは関連する経験があり、かつ、MedDRA使用の訓練を受けた者)によってレビューされる必要がある。
オートエンコーダーなどのITツールによる用語選択の結果が、報告された情報を十分に反映し、かつ、医学的に意味をなすものであるために、人による最終チェックが必要である。

2.3 MedDRAを変更してはならない
MedDRAは標準用語集であり、用語の階層構造はあらかじめ決められている。
ユーザーはプライマリーSOCの変更など便宜的な構造上の変更は行ってはならない。
若しそのようなことが行われればMedDRAの標準用語集としての品質を危険にさらすこととなる。
用語が階層構造上で不適切に分類されていると考えた場合には、変更要請をMSSOに提出すべきである。

例示

プライマリーSOCの変更要請
MedDRAの以前のバージョンでは、PT「第VIII因子欠乏症 (Factor VIII deficiency)」という用語のプライマリーSOCは、「血液およびリンパ系障害」となっていたが、修正により、「先天性、家族性および遺伝性障害」がプライマリーSOC、「血液およびリンパ系障害」がセカンダリーSOCとされた。

2.4 常にLLTを選択する
報告された情報を最も正確に反映する「下層語(LLT)」を選択すべきである。
幾つかのLLTは非常に特異性が高いものがあり、それらの用語選択に際しては十分な注意が必要である。

•  報告語の中のアルファベット一文字の有無によって用語の意味が異なり、最終の用語選択に影響することがある。

例示

報告語 選択されたLLT
Lip sore(唇の痛み) Lip sore (PT Lip pain) 口唇疼痛(PT: 口唇痛)
LLip sores(唇の炎症)Sores lip (PT Cheilitis) 口唇炎(PT:口唇炎)
Sore gums(歯ぐきの痛み)Sore gums (PT Gingival pain) 歯肉痛(PT:歯肉痛)
Sores gum(歯ぐきの炎症)Sores gum (PT Gingival inflammation) 歯肉の炎症(PT:歯肉の炎症)

•  性別を特定した用語
通常、MedDRAでは、人の集団に関する修飾語(性別、年齢など)は除外されているが、性別が重要な意味を持つ場合には、例外的に性別を特定した用語が収載されている。

例示

性別を特定した用語
MedDRAには、"不妊症(Infertility)"、"女性不妊症(Infertility female)" 、"男性不妊症(Infertility male)"などの性別を特定したLLT/PT が収載されている

組織内の用語選択ガイドには、性別を特定した用語が重要な場合の例を示すべきである。
また、MedDRAでコードされたデータと性別を特定した用語を持たない他の用語集でコードされたデータと比較する場合には注意が必要である。

性別の特定- 過去の用語集とMedDRA用語の比較
過去の用語集では「乳癌」だけが収載されている場合があり、MedDRAでは性別を特定した乳癌用語(女性乳癌、男性乳癌)があるので、データを比較する場合には、その用語選択の影響を考慮する必要がある

• 術後および処置後を特定した用語
MedDRA には、術後あるいは処置後を特定した用語が収載されているので、最も適切な用語を選択するべきである。

例示

報 告 語 選択されたLLT
術後の出血術後出血
処置後の敗血症を発症 処置後敗血症

• 新規追加用語
最新バージョンを使うことにより、新規に追加されたより詳細なLLTを選択することが可能な場合がある(付録4.2項参照)。

2.5 カレントLLTを選択する
ノンカレントのLLTを選択してはいけない。
JMO注:ここで意味するノンカレントは英語LLTに対するカレンシーフラグである

2.6 用語の追加要請
各組織が独自の解決法を作成することによって、MedDRAの不備に対処することは適切ではない。
報告された医学的概念がMedDRAの最新版で的確に表現されていない場合は、MSSOに対して変更要請する。

例示

新用語の追加要請
「HBV同時感染:HBV coinfection」という用語は、ユーザーの要請によりMedDRAに追加された。

2.7 医学的判断の必要性
完全に一致する用語は見つからないが、該当する医学的概念がMedDRA中の既存用語で適切に表現されていると考えられる場合には、医学的判断により用語を選択すべきである。
例示

報告語 選択されたLLT コメント
もろい毛髪
(Brittle hair)
毛髪断裂
(Hair breakage)
「もろい毛髪」はMedDRAには収載されていない。具体性の低い用語「毛髪障害(Hair disorder)」よりも「毛髪断裂(Hair breakage)」の方が医学的概念を正確に反映している

2.8 複数の用語の選択
単一のMedDRA用語では特定の医学的概念が表現できない場合には、新規用語の追加要請の手順に従い用語追加を考慮すべきである(項目2.6参照)。
新用語が追加されるまでは、単一あるいは複数の現行用語を選択するが、このような場合には一貫性のある方法が用いられるべきであり、データ検索、分析および報告に対する影響を慎重に考慮すべきである。
場合によっては、報告された情報を表現するために2つ以上の用語を選択することが適切である。1語だけを選択した場合、報告された情報の特異性が失われることがある。一方2語以上を選択した場合、AEの件数が多くなる可能性がある。用語選択の手順を決め、それを記録に残しておくべきである。

例示

複数LLTの選択
単一の用語として「遠隔転移を伴う歯肉癌」はMedDRAには収載されていない。
可能な選択肢は下記である
1.LLT「歯肉癌 」またはLLT「遠隔転移を伴う癌」を選択すること
2.LLT「歯肉癌 」およびLLT「遠隔転移を伴う癌」を選択すること

2.9 階層構造の確認
LLTを選択する際は、そのLLTが報告語の意味を正確に反映しているか、上層(PTおよびそれ以上のHLT,HLGT,およびSOC)へのリンクを確認すること。

2.10 報告された情報をすべて用語選択するが、情報の追加は行わない
医薬品との関連性が認められているかどうかとは無関係に、報告されたすべてのAR/AEに対して用語を選択するべきである。さらに医療機器関連の事象、製品品質問題、投薬過誤、医療歴、社会的履歴、臨床検査、適応症についても適切に用語選択を行うこと。
診断が特徴的な徴候・症状とともに報告された場合には、診断に対してのみ用語選択することが推奨される(詳細と例示は項目3.1を参照)。
用語選択の過程で、報告された情報を削除してはならない。同様に徴候・症状のみが報告された場合に診断名を選択してはならない。それは情報を追加したことになる。

例示

報告語 選択されたLLT コメント
腹痛
血清アミラーゼの上昇
血清リパーゼの上昇
腹痛診断名であるLLT膵炎を選択することは適切ではない
血清アミラーゼ増加
リパーゼ増加

第三章 用語選択のポイント

3.1 確定診断、暫定的診断および徴候・症状
下記の表は診断または暫定的診断が徴候・症状とともに報告された場合と、徴候・症状が報告されなかった場合の用語選択のポイントを示している。
例示は後半の表に示してある。
暫定的診断は"疑い(suspicion of)"、"可能性あり(probable)"、"推定される(presumed)"、"らしい(likely)"、"除外(rule out)"、"疑問の余地あり(questionable )"あるいは"鑑別診断(differential)"などの表現で報告されることがある。
一つ、または複数の暫定診断に対する好ましい選択肢は、暫定診断と報告された徴候・症状の双方に対して用語を選択することである。その理由は、暫定的診断は、後になって変更される可能性がある。しかし、徴候・症状は変更の可能性は無い。

好ましい選択肢および代替選択肢の要約
単一の診断
確定診断暫定的診断
徴候・症状を伴わない単一の診断

•  確定診断(唯一の選択肢)

徴候・症状を伴わない単一の暫定的診断

•  暫定的診断(唯一の選択肢)

徴候・症状を伴う単一の確定診断

•  確定診断のみ(推奨選択肢
•  あるいは確定診断と徴候・症状


注;診断の一部として通常認識されない
徴候・症状に関する用語は常に選択すること。

例 1参照

徴候・症状を伴う単一の暫定的診断

•  暫定的診断と徴候・症状(推奨選択肢
•  あるいは徴候・症状のみ(暫定的診断は
後で変更になることがあるため)

注;診断の一部として通常認識されない
徴候・症状に関する用語は常に選択すること。

例 2参照

複数の診断
確定診断暫定的診断
徴候・症状を伴わない複数の確定診断

•  複数の確定診断(唯一の選択肢)

徴候・症状を伴わない複数の暫定的診断

•  複数の暫定的診断(唯一の選択肢)

徴候・症状を伴う複数の確定診断

•  複数の確定診断(推奨選択肢
•  あるいは複数の確定診断と徴候・症状

注;診断の一部として通常認識されない
徴候・症状に関する用語は常に選択すること。

例 3参照

徴候・症状を伴う複数の暫定的診断

•  複数の暫定的診断と徴候・症状(推奨選択肢)
•  あるいは徴候・症状のみ(暫定的診断は
後で変更になることがある)

注;診断の一部として通常認識されない
徴候・症状に関する用語は常に選択すること。

例 4参照

例示と好ましい選択肢

報告語選択されたLLT好ま
しい
選択肢
例1 アナフィラキシー反応
発疹
呼吸困難
低血圧
喉頭痙攣
アナフィラキシー反応
アナフィラキシー反応
発疹
呼吸困難
低血圧
喉頭痙攣
 
例2胸痛
呼吸困難
発汗
心筋梗塞の可能性
胸痛
呼吸困難
発汗
心筋梗塞
胸痛
呼吸困難
発汗
 
例3 胸痛
チアノーゼ
息切れ
血圧低下

肺塞栓症
心筋梗塞
うっ血性心不全
肺塞栓症
心筋梗塞
うっ血性心不全
肺塞栓症
心筋梗塞
うっ血性心不全
胸痛
チアノーゼ
息切れ
血圧低下
 
例4 胸痛
チアノーゼ
息切れ
血圧低下

鑑別診断は
肺塞栓
心筋梗塞
うっ血性心不全
肺塞栓症
心筋梗塞
うっ血性心不全
胸痛
チアノーゼ
息切れ
血圧低下
胸痛
チアノーゼ
息切れ
血圧低下
 
診断の一部として通常認識されない徴候・症状に関する用語は常に選択すること。 心筋梗塞
胸痛
呼吸困難
発汗
心電図変化
黄疸
心筋梗塞
黄疸

(注:黄疸は通常心筋梗塞の一部とは認識されない症状である)
 

3.2 死亡およびその他の転帰
死亡、障害、入院などは安全性報告の関連では転帰と考えられ、通常AR/AEとは見なされない。転帰はAR/AE情報とは異なる方法(データフィールド)に記録される。
唯一報告された情報が「転帰」の場合、あるいは転帰が臨床的に重要な情報である場合には、転帰の内容を表す用語を選択すべきである(自殺、自傷に関する報告は項目3.3を参照)。

        3.2.1 副作用/有害事象に伴う死亡

死亡は転帰であり通常AR/AEとは見なされない。AR/AEが死亡とともに報告された場合には、報告された各AR/AEに対して用語を選択する。致命的転帰(死亡)は適切なデータフィールドに入力する。

例示

報告語 選択されたLLT コメント
心筋梗塞による死亡 心筋梗塞 死亡は転帰として記録
便秘
腸破裂
腹膜炎
敗血症
患者死亡
便秘
腸管穿孔
腹膜炎
敗血症

        3.2.2 死亡が唯一の情報
唯一報告された情報が「死亡」の場合は、死亡を表す最も具体的な用語を選択する。死亡の状況が報告者によって特定されていない限り死亡の状況を推測すべきではない。
死亡に関する用語はHLGT「致命的転帰」にリンクしている。

例示

報告語 選択されたLLT
患者が死亡しているのが発見された 発見時死亡
患者は分娩中に死亡した 分娩時母体死亡
剖検報告書に「死亡の状態は自然死である」と記載あり 自然死

        3.2.3 重要な臨床情報を含む死亡用語

重要な臨床情報を含んでいる死亡に関する用語は報告されたAR/AEとともに用語選択すべきである。

例示

報告語 選択されたLLT
患者は発疹が出て、突然心臓死した 発疹
心突然死

        3.2.4 その他の転帰(死亡以外)

入院、障害、その他の転帰などは通常AR/AEとは見なされない。

例示

報告語 選択されたLLT コメント
うっ血性心不全による入院 うっ血性心不全 入院は転帰として記録

唯一報告された情報が「転帰」の場合は、転帰を表す最も具体的な既存用語を選択する。

例示

報告語 選択されたLLT
患者は入院した 入院

3.3 自殺および自傷
適切なデータ検索と分析のためには、「自殺企図」、「自殺既遂」、「自傷」などの報告語の正確で一貫性のある用語選択が必要である。報告された傷害の動機が不明な場合にはより詳細な情報の入手を試みるべきである。

        3.3.1 過量投与が報告された場合

「過量投与(企図的過量投与を含む)」を「自殺企図」であると推測すべきではない。「過量投与」のみを表す最も適切な用語を選択する(項目3.18参照)。

        3.3.2 自傷が報告された場合

「自殺」または「自殺企図」にはふれていない「自傷」の報告は「自傷」のみを表す最も適切な用語を選択すべきである

例示

報告語 選択されたLLT コメント
自分で体を切った 自傷による裂傷 LLT「自傷による裂傷」はPT「故意の自傷行為」に
リンクしている
自分の両手首を切った
自殺目的で両手首を切った 自殺企図 さらにLLT「自傷による裂傷」を選択することができる

        3.3.3 自殺既遂

「自殺企図」が死亡に至った場合には、「自殺企図」のみではなく「転帰」を反映する用語を選択する。

例示

報告語 選択されたLLT コメント
死亡に到った自殺企図 自殺既遂 死亡は転帰として記録

3.4 矛盾/不明瞭/曖昧な情報
入手した情報が矛盾している場合や不明瞭あるいは曖昧な場合には、適切なデータ検索を可能とするための用語の選択が困難になることもある。そのような場合は、より明確な情報を入手するよう試みるべきである。
明確な情報が得られなかった場合には、以下の例に示す用語選択が可能である(項目3.4.1から3.4.3参照)。

        3.4.1 矛盾する情報

例示

報告語 選択されたLLT コメント
高カリウム血症
(血清カリウム1.6mEq/L)
血清カリウム異常 LLT「血清カリウム異常」は報告された
二つの概念を表す。(注: 血清カリウム
1.6mEq/L は高値ではなく低値である)

        3.4.2 不明瞭な情報

例示

報告語 選択されたLLT コメント
GU 痛 疼痛 “GU”の意味について報告者に確認することによってより正確な用語選択が可能になる。「GU」は「泌尿生殖器(genito-urinary)」または「胃潰瘍(gastric ulcer)」のいずれかを指す可能性がある。追加の情報が入手できない場合には、知り得た情報を表す用語、例えば「疼痛(Pain)」を選択する。

        3.4.3 曖昧な情報

曖昧な情報が報告された場合には、その意味合いを明確にするよう努めるべきである。詳細な情報が入手できない場合には、報告された曖昧な内容を反映するLLTを選択する。

例示

報告語 選択されたLLT コメント
緑色に変色 評価不能の事象
(Unevaluable event)
“緑色に変色”との報告のみでは曖昧である。患者の状態か製品(例えば錠剤)の状態か判別できない。
患者は詳細不明な医学的問題を抱えている 不明確な障害
(Ill-defined disorder)
何らかの医学的な問題があることは判るのでLLT「不明確な障害」を選択できる

3.5 組合せ用語
組み合わせ用語とは、単一の医学的概念を表す用語に、病態生理学的あるいは病因学的に重要な情報を表すための医学的用語が付加されたものであり、下記の例に示すような国際的に認められた明確な医学的概念を表すものである。

例示

組み合わせ用語
PT 「糖尿病網膜症」
PT 「高血圧性心拡大」
PT「好酸球性肺炎」

報告されたAR/AEによっては組み合わせ用語が選択される場合がある(例:ある状態に起因する別な状態)。下記の点に留意すること(医学的判断が求められる)。

        3.5.1 診断と徴候・症状

診断と特徴的な徴候・症状が報告された場合には、診断を表す用語を選択する(項目3.1参照)。この例では組み合わせ用語は不要である。

例示

報告語 選択されたLLT
心筋梗塞による胸痛 心筋梗塞

        3.5.2 組合せの一方が、より詳細な状況を表す場合

二つの状態が組み合わされて報告され、一方がより詳細である場合には詳細な内容に対する用語を選択する。

例示

報告語 選択されたLLT
肝機能障害(急性肝炎) 急性肝炎
心房細動による不整脈 心房細動

        3.5.3 組合せ概念を表すMedDRA用語がある場合
二つの状態が組み合わせで報告され、それを表す単一のMedDRA用語がある場合には、その用語を選択する。

例示

報告語 選択されたLLT
糖尿病による網膜症 糖尿病網膜症
そう痒を伴う皮疹 そう痒性皮疹

        3.5.4 複数のMedDRA用語の選択が良い場合
報告されたAR/AEを分割することで、より多くの臨床情報が得られる場合には、複数の用語を選択する。

例示

報告語 選択されたLLT
下痢と嘔吐 下痢
嘔吐
転倒による手首骨折 手首関節骨折
転倒

報告語を分割する際に入手した情報が失われないよう医学的判断を用いるべきである。選択したMedDRA用語が報告された情報に対して適切であるかどうか、常にMedDRAの階層構造(上位語)を確認すべきである。

例示

報告語 選択されたLLT コメント
動物に咬まれて血腫が出来た 動物咬傷
外傷性血腫
LLT「外傷性血腫」はLLT「血腫」よりも適切である。(LLT「外傷性血腫」はHLT「部位不明の損傷NEC」とHLT「出血NEC」にリンクしているが、LLT「血腫」はHLT「出血NEC」にしかリンクしていない。)

        3.5.5 既存の医学的状態と共に報告された事象
ある事象が変化のない既存状態と共に報告され、その組み合わせを適切に表すMedDRA用語がない場合は、事象を表す用語のみを選択する(項目3.9既存の状態の変化参照)

例示

報告語 選択されたLLT コメント
癌患者での癌による息切れ 息切れ この例では息切れが事象であり、癌は変化のない既存の状態である。

3.6 年齢と事象の特定

        3.6.1 年齢と事象を特定したMedDRA用語がある場合

例示

報告語 選択されたLLT
新生児の黄疸 新生児黄疸
6歳で精神病の発症 小児精神病

        3.6.2 年齢と事象を特定したMedDRA用語がない場合
年齢群と事象を特定した用語がない場合には、好ましい選択肢は事象を示す用語を選択することである。年齢は患者因子のフィールドに格納すること。
あるいは、年齢と事象を示す用語を個々に選択する。

例示

報告語 選択されたLLT 好ましい選択肢 コメント
新生児の膵炎 膵炎 年齢は患者因子のフィールドに格納する
膵炎
新生児障害
  年齢は患者因子のフィールドに格納する。さらに、LLT「新生児障害」を追加選択する

3.7 身体部位と事象の特定

        3.7.1 身体部位と事象を特定したMedDRA用語がある場合

例示

報告語 選択されたLLT
顔面の皮疹 顔面皮疹

        3.7.2 身体部位と事象を特定したMedDRA用語がない場合
身体部位のみが特定されている用語より、事象を表す用語を選択する。言い換えると事象に関する情報は一般的に優先される。

例示

報告語 選択されたLLT コメント
胸部の皮疹 皮疹 この場合は胸部の皮疹に対する用語は存在していない。

しかし、医学的な判断が必要とされ、場合によっては下記の事例のように身体部位が優先される場合もある。

例示

報告語 選択されたLLT コメント
注射部位のチアノーゼ 注射部位反応 チアノーゼは全身の障害である。この例示ではLLTチアノーゼを選択することで、重要な医学情報を失い、誤解を招く恐れがある

        3.7.3 複数の身体部位に発現した事象

同じ有害事象が複数の身体部位で報告され、それらのLLTが同一のPTにリンクする場合は、その有害事象を最も正確に反映する単一のLLTを選択する。言い換えると事象の情報が優先される。

例示

報告語 選択されたLLT コメント
顔と頚部の皮疹 皮疹 LLT 「顔面皮疹」と LLT 「頚部皮疹」は共に PT「発疹」にリンクしている
手と足の浮腫 四肢浮腫 LLT 「手の浮腫」とLLT 「足部浮腫」は共に PT 「末梢性浮腫」にリンクしているが、 LLT「四肢浮腫」が単一用語では最も正確に報告内容を反映する

JMO注)国内の行政指導では個別LLTの報告が求められている

3.8 感染部位特異性と感染微生物特異性

        3.8.1 MedDRA用語に微生物名と感染部位を含む用語がある場合

例示

報告語 選択されたLLT コメント
肺炎球菌性肺炎 肺炎球菌性肺炎 この例示で用いた解剖部位は肺である

        3.8.2 MedDRA用語に微生物名と感染部位を含む用語がない場合

好ましい選択肢は微生物名を特定した感染用語と解剖学的部位を示す双方の用語を選択することである。
他の選択肢として、解剖学的部位を表す用語を選択すること、または微生物名を特定した感染用語を選択することである。解剖学的部位と微生物名を特定した感染のどちらが重要かについては医学的な判断を行うべきである。

例示

報告語 選択されたLLT 好ましい選択肢 コメント
呼吸器のクラミジア感染 クラミジア感染
呼吸器感染
微生物名と部位を特定したそれぞれの感染用語
呼吸器感染   部位を特定した感染用語
クラミジア感染   微生物を特定した感染用語

3.9 既存状態の変化
既存の医学的状態の変化、特に状態が悪化または進行した場合はAR/AEとして扱うことができる(「変化のない既存状態」に関しては項目3.5.5、「予期しない治療効果」に関しては3.22項参照)。

既存の状態の変化を表す方法
増悪、悪化(Aggravated, exacerbated, worsened)
再発(Recurrent)
進行(Progressive)

変化した状態を正確に反映する用語があれば、選択する。

例示

報告語 選択されたLLT
重症筋無力症の悪化 重症筋無力症の増悪

そのような用語がない場合は、下記のような方法を考慮する

Ø  例1:既存の状態を表す用語を選択し、変化した内容は一貫性を持った方法で適切なデータフィールドに記録する。

Ø  例2:既存の状態を表す用語および追加用語として状態の変化を表す用語(例えば、LLT「状態悪化」、LLT「疾患進行 」)を選択する。変化した内容は一貫性を持った方法で適切なデータフィールドに記録する。

例示

選択肢 報告語 選択されたLLT コメント
例 1 黄疸の悪化 黄疸 悪化という情報は一貫した方法で記録する
例 2 黄疸の悪化 黄疸
状態悪化
「悪化」との情報は一貫性を持った方法で記録する。
既存の状態と変化した状態の2語を用いて記録する

3.10 妊娠中、授乳中の曝露
最も適切に状態を表す用語を選択する。先ず、有害事象が観察されたのが母親か子供/胎児なのかを明らかにする必要がある。

        3.10.1 母体での事象

Ø  患者が薬剤服用中に妊娠した

妊娠は通常有害事象とは考えない。しかし、組織によっては、それらの情報をデータベースに保存したいと考える場合がある。

例示

報告語 選択されたLLT コメント
妊娠(副作用なし) 妊娠
副作用なし
有害事象が発生していない場合には、LLT「妊娠」に加えて、LLT「副作用なし」を選択する  (3.21項参照)
妊娠(結果に関する情報なし) 妊娠 転帰あるいは有害事象の発生が不明の場合は、 LLT 「妊娠」のみを選択する

Ø  妊娠した患者が服薬中に有害事象を経験した

例示

報告語 選択されたLLT コメント
妊娠中の患者が薬剤Xの投与を受けている間にそう痒性皮疹を経験した 妊娠時の母体の曝露
そう痒性皮疹
同時に病歴(併存する医学状態)としてLLT 「妊娠」を選択すべきである

        3.10.2 子供・胎児での事象

薬剤曝露のタイプと有害事象の用語を選択する。

例示

背景/患者 報告語 選択されたLLT
母親が服薬し、胎児は子宮の中でその薬剤に曝露され、有害事象が発生した。 妊娠している女性が薬剤Xを服用し、妊娠定期健診で、胎児頻脈 が観察された。 子宮内薬物曝露
胎児頻脈
父親が服薬し、子供は子宮の中でその薬剤に曝露され、有害事象が発生した。 妊娠する際に父親が薬剤Xを服用しており、新生児が口蓋裂をもって生まれた。 妊娠前の父親の薬物曝露
口蓋裂
授乳により、新生児が薬剤曝露され、有害事象が発生した。 母親が薬剤Xを服用中に授乳していた新生児が嘔吐を経験した 母乳を介した薬物曝露
新生児嘔吐

3.11 先天性用語
MedDRAでの「先天性(congenital)」の定義は、「遺伝的に発現しても、子宮内で生じても、出生時に呈するすべての状態」を言う(「MedDRA手引書」参照)。

        3.11.1 先天性という状態

報告者がその状態を先天性であると報告した場合、あるいはその状態が出生時の児に認められたことが医学的判断から明らかな場合には、SOC「先天性、家族性および遺伝性障害」にリンクする用語を用いるべきである。

例示

報告語 選択されたLLT
先天性心臓疾患 先天性心臓疾患
心臓疾患を持って生まれた小児

        3.11.2 先天性でない/出生時にみられていない状態

状態が先天性と記述されていない、または出生時に見られていない場合には、先天性と特定されない用語を選択する。先天性と特定されない用語がMedDRAにない場合には後天性の用語を選択する。

報告語 選択されたLLT コメント
夜盲 夜盲 LLT/PT「夜盲」のプライマリーSOCはSOC「眼障害」である。
SOC「先天性、家族性および遺伝性障害」をプライマリーSOCとするLLT/PT「先天性夜盲」を想定すべきでない
胆管拡張症 後天性胆管拡張症  

3.12 新生物
新生物には多彩なタイプがあるため、全ての状況に対応するガイドを提供することは困難である。しかし、MedDRAの手引書には新生物およびその関連用語の配置と利用が記述されている。

下記のことに留意する。

MedDRAに於ける新生物用語
・癌(cancer と癌(carcinoma)は同意語である(MedDRA手引書付録B参照)
・腫瘍(tumo(u)r)は新生物(neoplasia )である
・腫瘤(lump と腫瘤(mass)は新生物(neoplasia)ではない

報告された新生物のタイプが明確でない場合には、報告者に明確化を求めることを考慮すべきである。難解な、あるいは特殊な新生物に関連する用語を選択する場合には、医学専門家の意見を聴くべきである。

        3.12.1 悪性度を推測しない

報告者によって悪性と明示されている場合のみ悪性新生物(癌)に関する用語を選択する。 腫瘍(tumor)との報告に対して、明確な悪性度が示されていない限り「癌(cancer、carcinoma)」の用語を選択してはならない。

例示

報告語 選択されたLLT
皮膚に腫瘍ができた 皮膚腫瘍
舌に癌ができた 舌癌

3.13 内科的/外科的処置
SOC「外科および内科処置」の用語は通常AR/AEを表すことには適切でない。このSOCにリンクする用語は、複数軸構造をとっていない。ユーザーはこれらの用語を使用した際のデータ検索、データ解析、および報告への影響に注意すべきである。

処置の用語を選択する際は、以下のポイントを参考にされたい。

        3.13.1 処置のみが報告された場合

処置に関する情報のみが報告された場合は、処置に対する用語を選択する。

例示

報告語 選択されたLLT
患者は血小板輸血を受けた 血小板輸血
幼児期に扁桃摘出を受けた 扁桃摘出

        3.13.2 処置と診断が報告された場合

処置が、診断と組み合わされて報告された場合には、好ましい選択肢は処置と診断の双方の用語を選択することである。また、診断を示す用語のみを選択することも可能である。

例示

報告語 選択されたLLT 好ましい選択肢 コメント
肝損傷による肝移植 肝移植
肝損傷
処置の用語を選択することで、状態の重症度を表すことができる
肝損傷    

3.14 臨床検査
SOC 「臨床検査」には、検査の結果を表す修飾語(例:増加(increased)、低下(decreased)、異常(abnormal)、正常(normal))が付いている用語と修飾語が付いていない、検査項目名を表す用語とが含まれている。「hyper-」、「hypo-」などの医学的状態に対応する用語は、その他の「疾患」のSOCに分類されている(例えば、SOC「代謝および栄養障害」)。
SOC「臨床検査」の用語は多軸に設定されていないため、データ検索に際して、特定の「疾患」のSOCに加えてSOC「 臨床検査」に関連する用語があるか否かを常に考慮しなければならない。

        3.14.1 副作用/有害事象としての検査結果
検査結果の用語を選択する場合には、下記の点に留意が必要である。

Ø  医学的状態の用語あるいは結果用語の選択

例示

報告語 選択されたLLT コメント
低血糖症 低血糖症 LLT「低血糖症」はSOC「代謝および栄養障害」にリンクしている
グルコース低下 ブドウ糖減少 LLT「ブドウ糖減少」は SOC「臨床検査」にリンクしている

Ø  曖昧でない検査結果

例示

報告語 選択されたLLT コメント
グルコース40mg/dl ブドウ糖低値 ブドウ糖値は明らかに正常範囲以下である

Ø  曖昧な検査結果

例示

報告語 選択されたLLT コメント
彼のグルコースが40であった ブドウ糖異常 この事例では単位が報告されていない。詳細が得られないのであれば LLT「ブドウ糖異常」を選択する

        3.14.2 診断と一致する検査結果
検査結果が診断名と共に報告され、両者が一致している場合には、診断名のみを用語選択する。

例示

報告語 選択されたLLT コメント
カリウム値の上昇(K7.0mmol/L)
および
高カリウム血症
高カリウム血症 LLT「カリウム増加」を用語選択する必要はない

        3.14.3 診断と一致しない検査結果
検査結果が診断名と共に報告され、検査結果と診断名が一致しない場合には、診断名および診断名に一致しない検査結果の用語の双方を選択する。

例示

報告語 選択されたLLT コメント
脱毛症、発疹、
および
カリウム 7.0mmol/Lへの上昇
脱毛症
発疹
カリウム増加
カリウム上昇と、診断名の脱毛症、発疹の間には関連がない。全ての報告された概念を選択すること

        3.14.4 包括された検査結果
報告された個々の臨床検査の結果は、それぞれの用語を選択すべきである:包括された用語で報告されない限り、個々の検査結果を一つにまとめた用語を選択すべきでない。

例示

報告語 選択されたLLT コメント
肝機能検査の異常が見られた 肝機能検査異常  
アルカリホスファターゼの上昇、SGPT上昇、SGOT上昇、LDH上昇が見られた アルカリホスファターゼ増加
血清GPT増加
血清GOT増加
LDH増加
個々の検査結果の用語を選択する。LLT「肝機能検査異常」として、一つの用語を選択すべきでない

        3.14.5 検査項目を表す用語
SOC「臨床検査」中の用語で修飾語を持たない用語は、診断のための検査データを入力する場合、臨床検査の項目名を記録するのに利用される

例示

情報/報告語 選択された検査
項目名を表す
LLT
コメント
心拍出量が計測された 心拍出量  
血糖上昇 血中ブドウ糖 LLT「血中ブドウ糖増加」は「検査項目名」と「検査結果」の双方を表しているので臨床検査の項目名としては選択してはならない。

「増加」などの修飾詞や数値(入手可能な場合)は「検査結果」の欄に入力する。

3.15 投薬・投与過誤、偶発的曝露および職業性曝露

        3.15.1 投薬・投与過誤
「投薬過誤」とは、薬剤が医療関係者、患者自身、或は消費者の管理の下にある場合で、患者にとって有害なこと、または不適切な薬剤使用を引き起こす可能性がある総ての回避可能な事象を指す。

MedDRAの手引書の付録Bに幾つかの投薬過誤の定義および使い方が記述されているので参照すること(例えば、調剤過誤)。
臨床的影響を伴うか否かにかかわらず投薬過誤に関する情報が報告されることがある。

        3.15.1.1 臨床的影響を伴う投薬過誤
投薬過誤が臨床的影響を伴って報告された場合には、投薬過誤と臨床的影響の双方の用語を選択する。

例示

報告語 選択されたLLT
患者は誤った薬剤を投与され低血圧を経験した 誤薬投与
低血圧
医薬品の名称が類似していたため、患者は誤った薬剤を服用し、発疹が発生した 薬剤名の混同
誤薬投与
発疹

        3.15.1.2 臨床的影響を伴わない投薬過誤および潜在的投薬過誤
臨床的影響を伴わない投薬過誤は、AR/AEではない。しかし、投薬過誤の発生またはその可能性を示唆する事象を捕捉することは重要である。投薬過誤の種類を表す用語で最も近いものを選択することが必要である。
また、報告者が副作用の発生がないことを報告している場合にはLLT「副作用なし」を選択することも可能である。
患者に薬剤が投与されなかった場合には、LLT「投薬過誤回避のための服薬中止」を選択することも可能である。

例示

報告語 選択されたLLT コメント
筋注用医薬品を筋注ではなく、静注した 別経路からの筋注用製剤投与  
筋注用医薬品を筋注ではなく、静注したが、後遺症はなかった 別経路からの筋注用製剤投与
副作用なし
3.21項参照
患者は誤った薬剤を調合されたが、間違いは投与前に発見された 回避された調剤過誤  
2種類の薬剤名が類似しており、薬剤師は投薬過誤の発生を危惧した 投薬過誤につながる状況または情報 LLT「薬剤名の混同」を追加して選択することも可能である(追跡の目的で)なぜならこの例は潜在的な投薬過誤であるため
薬剤が不注意に投与され、その直後に誤投与に気が付いた 薬剤誤投与  

        3.15.1.3 表示された相互作用と投薬過誤
添付文書に、特定の薬剤または食物との併用あるいは特定の疾患状態への投与により特定の影響があると記述されている場合には、下記にリストされている相互作用に関する投薬過誤の用語を選択する。

投薬過誤用語 - 表示された相互作用
表示された薬物-薬物相互作用による投薬過誤
表示された薬物-食物相互作用による投薬過誤
表示された薬物-疾患相互作用による投薬過誤
投与薬に対する記録された過敏症

例示

報告語 選択されたLLT コメント
経口避妊薬と抗真菌剤を併用していた患者が妊娠した 表示された薬物-薬物相互作用による投薬過誤
経口避妊薬服用中の妊娠
相互作用はデータシートに記載がある
(3.20項参照)
カルシウムチャンネル遮断薬を服用している患者がグレープフルーツを飲んだ 表示された薬物-食物相互作用による投薬過誤 この製品にはグレープフルーツジュースとの相互作用が表示されていた
腎不全の患者が腎不全は禁忌とされている薬剤を処方された 表示された薬物-疾患相互作用による投薬過誤
 
患者は、スルフォンアミド系の薬剤を投与された 投与薬に対する記録された過敏症 この患者の診療記録にはサルファ剤へのアレルギーが明確に示されていた

        3.15.1.4 投薬過誤を推測しない
特定された報告がない限り、投薬過誤が発生したと推測しない。このことには規定量以上の投与、過量投与、過少量投与の発生も含まれる(3.18項目参照)。

例示

報告語 選択されたLLT コメント
抗生物質が1週間分処方されたが、味が苦いとの理由で、患者が2日で服用を中止した 処方投与期間終了前の中止
苦味
LLT 「苦味」は感覚(知覚)の問題を表すが、LLT 「薬剤の後味」は製品品質の問題である
患者は誤った用量を服用した 誤用量投与 この情報のみで、「規定量以上の投与」、「過量投与」を選択してはならない
患者は処方の半量を服用した 過少量投与  

        3.15.2 偶発的曝露および職業性曝露

        3.15.2.1 偶発的曝露
項目3.15.1(投薬・投与過誤)とおなじ原則が偶発的曝露にも適用される。

例示

報告語 選択されたLLT コメント
子供が祖母の薬剤を間違えて飲み、噴出性嘔吐を経験した 子供の偶発的薬剤摂取
噴出性嘔吐
 
腕に外用ステロイド剤を使用中の父親が子供を抱いて偶発的に子供が薬剤に曝露された 子供の偶発的製品曝露
皮膚接触を介した曝露
「~への曝露」との用語は曝露したものを示し、「~を介した曝露」との用語は「皮膚接触」などの様に経路、媒介物を示す

        3.15.2.2 職業性曝露
用語選択およびMedDRAでコーディングされたデータの解析の目的では「職業性曝露」とは、通常の職業的行為中の「ある物質(治療用製品を含む)への慢性的な曝露」を意味するが、それぞれの地域での特定な規制要件によっては、概念が追加されることがある。例えば 職業上の、より急性な、偶発的な曝露に関連した概念を含むこともある。これらの地域では医療従事者の職業性曝露が特別な関心事であることがある。

例示

報告語 選択されたLLT コメント
理学療法士が患者に痛み止めクリームを塗布後に両手に光線過敏性皮疹を発症した 職業性薬物曝露
皮膚接触を介した曝露
光線過敏性皮疹
 
病理学者が慢性的にホルムアルデヒドに曝露し上咽頭癌を発症した 職業性毒性物質曝露
上咽頭癌
ホルムアルデヒドはこの種の癌のリスクファクターとして知られている
看護師が注射薬を飛び散らして、自分の目に入り、流涙過多となった 偶発的薬物曝露
涙液過剰
その国での規制要件によっては職業性曝露を表す用語例えばLLT「職業性薬物曝露」を選択することもできる

3.16 誤用、乱用および嗜癖
誤用、乱用および嗜癖の概念は密接に関連しており、ある意味では重複している場合もあり、用語選択に際しては困難さをもたらすことがある。報告された事象の特別な状況を理解することが、用語選択の助けとなることがあろう。医学的判断と、地域的な規制状況に配慮することが必要である。

下記の表はこれらの概念を考える際に有用であろう。

概念 意図的か? 誰が 治療目的か? 本資料中の
関連項目
誤用(Misuse) Yes 患者 / 消費者 Yes 3.16.1
乱用(Abuse) Yes 患者 / 消費者 No 3.16.2
嗜癖(Addiction) Yes 患者 / 消費者 No 3.16.3
投薬過誤
(Medication error)
No 患者 / 消費者
または
医療従事者
Yes 3.15
適応外使用
(Off label use)
Yes 医療従事者 Yes 3.27

        3.16.1 誤用
用語選択およびMedDRAでコーディングされたデータの解析の目的では「誤用」とは、意図的に、処方された内容あるいは添付文書記載の内容以外に、不適切に製品(OTCあるいは処方薬)を使用すること。

例示

報告語 選択されたLLT
患者は意図的に局所外用薬を服用した 誤った経路での企図的使用
患者は意図的に添付文書記載の投与期間よりも2日間余分に薬剤を服用した 表示投与期間を超過した企図的使用

        JMO注: ここでの“Misuse”は意図的な使用で、日本語で「誤用」と言った場合には「誤って使用した」の意味も含まれるので、そのような意味での報告の場合はLLT: 「投薬過誤(Medication error)」を選択するのが適切である。

        3.16.2 乱用
用語選択およびMedDRAでコーディングされたデータの解析の目的では「乱用」とは 意図的に、感覚的快楽または期待される非治療的な効果を目的として、製品(OTCあるいは処方薬)を使用することである。その中には「ハイな気分になること(高揚感)」も含まれるが、それのみに限定されるものではない。乱用は単回使用、散発的使用、持続的使用によっても起こる。

例示

報告語 選択されたLLT
運動選手が能力増強のためタンパク同化ステロイド剤を使用した ステロイド乱用
患者はハイな気分を味わうため時々アヘン類を使用 アヘン類乱用、挿間的使用
患者は意図的に精神活性効果のため局所外用薬を服用した 薬物乱用
誤った経路での企図的使用

        追加の(abuse)関連事項は項目3.24.1及び3.24.2参照

        3.16.3 嗜癖
用語選択およびMedDRAでコーディングされたデータの解析の目的では「嗜癖」とは 非治療的目的での薬剤使用への抗し難い欲求で、有害な影響があるにも拘らず、その使用をコントロールするあるいは中止することができない状態を指す。嗜癖は、身体的依存の結果「離脱症候群」を惹き起こすことがあるが それは基本的な特徴ではなく、薬剤の持つ,精神的、行動的、身体的効果を経験することへの欲求から生ずることである。

例示

報告語 選択されたLLT
患者はクラックコカイン依存となった コカイン依存
患者は意図的に精神活性効果のため局所外用薬を服用し、薬物嗜癖となった 薬物嗜癖
誤った経路での企図的使用

        MedDRA中の嗜癖用語の関連事項は項目3.24.1参照.

3.17 製品を介する感染因子の伝播
製品を介する感染因子の伝播が報告された場合、伝播(transmission)を表す用語を選択する。さらに、感染が特定される場合には、追加用語として感染を特定する用語を選択する。適切な場合には、「製品品質の問題」に関する用語も選択することができる。(項目3.28参照)

例示

報告語 選択されたLLT
患者は鼻スプレー製剤を使用したあとバークホルデリア・セパシアによる重症な鼻感染を起こした。未開封の同一鼻スプレー製剤を培養した結果B.セパシアが同定された。 医薬品を介する感染因子伝播の疑い
製品の細菌汚染
バークホルデリア・セパシア感染
患者は輸血を受けC型肝炎になった 輸血による感染症
C型肝炎

報告者は感染の伝播が医薬品によるものであると明確には報告していないが、その報告の他のデータから感染が示唆される場合には医学的な判断をするべきである。そのような場合、LLT「医薬品を介する感染因子伝播の疑い」を選択する。

3.18 過量投与、毒性および中毒
過量投与の用語はHLT「過量投与」下にグルーピングされている。毒性と中毒の用語はHLT「中毒および毒性」の下にグルーピングされている。詳細な情報はMedDRAの手引書を参照のこと。
過量投与、毒性あるいは中毒と明確に報告された場合には適切な用語を選択する。

例示

報告語 選択されたLLT コメント
ピルの過量投与 過量投与  
子供が化学洗浄剤を誤飲し、中毒症状を示した 偶発的中毒
化学物質中毒
 
患者は処方されている錠数より多い数を企図的に服用した 企図的過量投与  
服用した薬剤Xの量は添付文書記載の最大投与量を超えていた 薬剤過量投与  
看護師が不注意で、すでに予防接種を受けた子供に再度ワクチンを投与した 不適切な用量のワクチン投与 LLT「不適切な用量のワクチン投与」は誤投与を示す用語であり、特に「過量投与」のみを意味しないことに注意

        3.18.1 臨床的影響を伴う過量投与
過量投与に伴って報告された臨床的影響を表す用語と「過量投与」を選択する。

例示

報告語 選択されたLLT
治験薬の過量投与による胃不調 過量投与
胃不調

        3.18.2 臨床的影響を伴わない過量投与
過量投与が臨床的影響を伴わないと明確に報告された場合には、好ましい選択肢は過量投与を表わす用語のみを選択することである。別な方法として、過量投与を表わす用語に加えてLLT「 副作用なし」を選択することができる(3.21項参照)。

例示

報告語 選択されたLLT 好ましい選択肢
患者は薬剤の過量投与を受けたが、なんら有害な影響はなかった 過量投与
過量投与
副作用なし
 

3.19 医療機器用語

        3.19.1 臨床的影響を伴う医療機器に関連する事象
可能であれば、報告されている医療機器関連と臨床的影響の両方を反映する用語を選択する。

例示

報告語 選択されたLLT
血管インプラント移植を受けた患者でインプラントの感染が発生した 血管インプラント感染
患者が移植したプロテーゼの痛みを訴えた 医療機器による疼痛

医療機器関連と臨床的影響の表す単一の用語がない場合は、双方の用語を選択する。

例示

報告語 選択されたLLT
医療機器の機能不全による心室性頻脈 医療機器機能不良
心室性頻脈
部分義歯が破損し歯痛が生じた 歯科補てつ物破損
歯痛

        3.19.2 臨床的影響を伴わない医療機器に関連する事象
臨床的影響を伴わない医療機器関連の事象が報告された場合には、適切な用語を選択する。

例示

報告語 選択されたLLT
医療機器が破損した 医療機器破損
腕のパッチから薬剤が漏出した パッチからの薬剤漏出
パッチが皮膚に密着しない 医療用パッチ粘着力の問題

3.20 薬物相互作用
相互作用の用語には、薬物と他の薬物、食物、医療用具、アルコールとの間の相互作用が含まれている。この文書では薬剤には生物製剤も含まれている。
添付文書に明記された相互作用は投薬過誤に関連することがある(項目3.15.1.3参照)。

        3.20.1 相互作用と特定された報告
相互作用の用語を選択し、さらに報告された医学的事象の用語を選択する。

例示

報告語 選択されたLLT
薬物相互作用の疑いによるトルサード ド ポアント 薬物相互作用
トルサード ド ポアント
患者がクランベリージュースを飲み、それが抗凝固剤と相互作用があり、INR増加を招いた 食物との相互作用
INR増加

        3.20.2 相互作用と特定されない報告
二つの製品が同時に使用され、報告者が特に相互作用の発生とは報告していない場合、医学的事象に対する用語のみを選択する。

例示

報告語 選択されたLLT
患者は抗けいれん薬と心臓病薬の投与を開始され、
失神をおこした
失神
抗けいれん薬を使用していた患者が心臓病薬を開始したところ、抗けいれん薬のレベルが上昇した 抗痙攣剤濃度増加

3.21 「副作用なし」および「正常」の用語

        3.21.1 副作用なし
LLT「副作用なし」は薬物に曝露されてもAR/AEが発生しなかったと明確に報告された場合のみに用いることができる(項目3.15.1.2 および項目3.18.2参照)。
組織によっては、管理目的で記録をとっておくために(例:妊娠登録、過量投与、投薬過誤など)LLT「副作用なし」を記録しておくことが必要とされる場合があり得る。

        3.21.2 「正常」用語
必要があれば、正常な状態および転帰の用語を利用することができる。

正常な状態および転帰に対する用語の例示
洞調律
正常児
正常心電図

3.22 予期しない治療効果
薬剤が投与された目的とは異なるが、有益な効果をもたらした報告に対して、組織によってはLLT「予想外治療効果」として記録することが必要とされる場合があり得る。(このような効果は通常はAR/AEとは考えられない)

例示

報告語 選択されたLLT
禿頭の患者が、ある製品を使用中に、
毛が生えてきて喜んだ
予想外治療効果
毛髪成長亢進

3.23 効果の変化
効果の変化(増加、延長など)は常にAR/AEと見なされる訳ではないが、情報を記録しておくことは重要である。

        3.23.1 効果の欠如
効果の欠如による臨床的な影響が報告されたとしても、好ましい選択肢は"効果の欠如"の概念のみを選択することである。しかしながら、効果の欠如がもたらす事象の用語を選択することも可能である。

例示

報告語 選択されたLLT 好ましい選択肢
患者は頭痛のため頭痛薬を服用したが、頭痛は治らなかった 薬効欠如
薬効欠如
頭痛
 
抗生物質が無効であった 薬効欠如  

        3.23.2 効果の欠如を推測しない

例示

報告語 選択されたLLT コメント
抗HIV薬を服用していたAIDS患者が死亡した 死亡 この場合は、「薬効欠如」を推定せずに、この文書の項目3.2に記載されているように、「死亡」に相当する用語を選択する。

        3.23.3 効果の増大、低下、延長

例示

報告語 選択されたLLT
患者に薬物Aによる効果の増大がみられた 薬効増加
患者に薬物Aによる効果の低下がみられた 薬効低下
患者に薬物Aによる効果の延長がみられた 薬効延長

3.24 社会環境

        3.24.1 社会環境用語の使い方
このSOC「社会環境」にリンクする用語は社会的要因を表しており社会環境歴や病歴データの入力に適している。SOC「社会的環境」に含まれる用語は一般的にはAR/AEの入力には適切でない。しかし、ある種のAR/AEをコーディングするためにこのSOCにリンクする用語のみが選択対象となることがあり、またその用語が重要な臨床情報を追加することがある。

例示

報告語 選択されたLLT
患者の運転能力が障害をうけた 運転能力障害者

SOC「社会的環境」に含まれる用語は多軸には設定されていない。またこのSOCは、MedDRAの他の障害を表すSOC(例えば、SOC「胃腸障害」)に含まれている用語とは異なり、医学的状態よりも、人(~者)を表している。
ユーザーはこれらの用語の使用がデータ検索、データ解析、報告に及ぼす影響を承知しておく必要がある。以下はその例示である。

SOC「社会環境」の用語
("人")
障害のSOCにある類似の用語
("状態")
アルコール中毒者(Alcoholic) アルコール症(Alcoholism)
薬物乱用者(Drug abuser) 薬物乱用(Drug abuse)
薬物常用者(Drug addict) 薬物嗜癖(Drug addiction)
接着剤吸引者(Glue sniffer) 接着剤吸引(Glue sniffing)
喫煙者(Smoker) ニコチン依存(Nicotine dependence)

「abuse」は「薬物等の乱用」の概念の他に下表に示すように、人を表すか状態を表すかに関係なく「虐待」の概念にも使用される。この「虐待」に関する用語もSOC「社会環境」にあるので注意すべきである。

LLT PT
児童虐待(Child abuse) 児童虐待(Child abuse)
児童虐待者(Child abuser)
高齢者の虐待(Elder abuse) 高齢者の虐待(Elder abuse)
高齢者虐待者(Elder abuser)

(次章 3.24.2を参照)

        3.24.2 犯罪、虐待などの不法行為
犯罪あるいは虐待(医薬品あるいは物質の乱用を除く)の不法行為を表す用語はLLT「身体的暴行」のようにSOC「社会的環境」にリンクしている。
加害者を表すLLTは不法行為あるいは犯罪行為そのものを表すPTにリンクしている。
不法行為の被害者を表すPTは「~の被害者(Victim of ~)」と表記されている。

例示

報告語 選択されたLLT コメント
患者は性的加害者としての過去がある 性的加害者 加害者:LLT「性的加害者」はSOC「社会環境」のPT「性的虐待」にリンクする
患者は小児期に性的暴行を受けた 小児期の性的暴行被害者 被害者: LLT「小児期の性的暴行被害者」はSOC「社会環境」のPT 「性的虐待の被害者」にリンクする

3.25 医学的または社会的履歴

例示

報告語 選択されたLLT
胃腸出血と子宮摘出の既往 胃腸出血
子宮摘出
冠動脈疾患を持つ紙巻タバコ喫煙者 紙巻タバコ喫煙者
冠動脈疾患

3.26 適応症
適応症は医学的状態、医学的状態の予防、補充療法、麻酔などの医学的処置あるいは"抗高血圧"のような逐語的表現で報告されることが考えられる。
適応症と言うデータの性格上、SOC「臨床検査」を含む全てのSOCの用語は適応症を表す用語としての選択対象と考えられる。
適応症のの用語選択に関し規制当局は特別な要請をすることがある。(例;添付文書に記載の承認適応症)。このような事項については規制当局のガイダンスを参照すること。

        3.26.1 医学的状態

例示

報告語 選択されたLLT
高血圧 高血圧
抗高血圧
乳癌に対する化学療法 乳癌
風邪の症状があるのでその薬を飲んだ 感冒症状

報告された内容が治療法のみであった場合は、最も特異的な用語を選択すする。

例示

報告語 選択されたLLT
患者は化学療法を受けた 化学療法
患者は抗生物質の投与を受けた 抗生物質療法

報告された適応症が医学的状態なのか、目的とする治療の効果なのか明らかでない場合がある。いずれの場合も選択された用語は同一になることがある。

例示

報告語 選択されたLLT コメント
体重減少 体重減少 目的が体重を減少することにあるのか、過少体重の患者の治療にあるのか不明
免疫抑制 免疫抑制 目的が、免疫抑制にあるのか、免疫抑制状態の治療にあるのか不明

        3.26.2 複数の適応症
ある種の適応症(例えば規制対象となる製品情報:添付文書)は詳細な表現を必要とし、場合によっては、その情報を正確に表すためには複数のLLTを選択することが必要となる場合がある。

例示

報告語 選択されたLLT コメント
自閉症での攻撃性の治療 攻撃性 ある地域の規制要件によっては、LLT「自閉症」、LLT「重症型サラセミア」、LLT「心筋梗塞」を選択する必要がある。したがって、その製品が基礎疾患の自閉症、βサラセミア、心筋梗塞の治療に用いられるわけではないが、随伴症状である(攻撃性、慢性鉄過剰、アテローム血栓症)に関して用語選択する必要がある
βサラセミアでの慢性鉄過剰の治療 慢性鉄過剰
心筋梗塞の患者でのアテローム血栓症の予防 アテローム血栓症予防

        3.26.3 遺伝子マーカーまたは遺伝学的異常の適応症
医学的状態に関連した遺伝子マーカーあるいは遺伝学的異常が適応症として報告された場合には医学的状態と遺伝子マーカーあるいは遺伝学的異常を表す用語の双方を選択する。

例示

報告語 選択されたLLT
K-ras遺伝子突然変異をともなう
非小細胞肺癌
K-ras遺伝子突然変異
非小細胞肺癌

        3.26.4 防止と予防
防止あるいは予防に関する適応症が報告された場合には、MedDRAの中に該当する用語があれば、それらを選択する(注:preventionとprophylaxisは、MedDRAでは同義語としている)。

例示

報告語 選択されたLLT
不整脈の予防 不整脈予防
片頭痛の防止 片頭痛予防

予防や防止を含んだ適切な用語がMedDRAにない場合は、下記の選択枝のいずれかを利用する(注:好ましい選択肢は一般的な防止/予防の用語と医学的状態に対する用語の双方を選択することである)。

例示

報告語 選択されたLLT 好ましい選択肢 コメント
肝毒性の予防 予防
肝毒性
双方の概念に最も近い用語を選択する
肝毒性   医学的状態に近い用語を選択する
予防   最も近い予防の用語を選択する

        3.26.5 適応症としての処置、診断のための検査
薬剤が処置や診断のための検査に使用された場合には、適切な用語を選択する。

例示

報告語 選択されたLLT
麻酔導入 麻酔導入
血管造影のための造影剤 血管造影
冠血管造影のための造影剤 冠血管造影

        3.26.6 補給および補充療法
補給療法および補充療法に関する用語は、SOC「外科および内科処置」にある。(項目3.13参照) 薬剤の適応症が補給療法あるいは補充療法に相当する場合には最も近い意味の用語を選択する。

例示

報告語 選択されたLLT
テストステロン補充療法 アンドロゲン補充療法
妊娠中のビタミン ビタミン補給

        3.26.7 適応症の報告なし
適応症が不明で、それ以上明確にできない場合には、「適応症不明の薬剤使用(Drug use for unknown indication)」を選択することができる。

例示

報告語 選択されたLLT
適応症不明のアスピリン服用 適応症不明の薬剤使用

3.27 適応外使用
「適応外使用」の概念は製品を企図的かつ医療目的で、公式な製品情報に記載された内容に従わずに使用する状況をさす。

        3.27.1 適応症として報告された適応外使用
ある医学的状態が使用目的として報告され、それが適応外使用であると明示されている場合には、好ましい選択肢はその医学的状態を表す用語とLLT「適応外使用」あるいはPT「適応外使用」の下位の適切なLLT用語の双方を選択することである。他の方法として、医学的状態を表す用語のみを選択することである。LLT「適応外使用(Off label use)」のみを選択するのはそれ以外に情報がない場合に限定される。

例示 1

報告語 選択されたLLT 好ましい選択肢
高血圧、これは適応外使用である 適応外使用
高血圧
高血圧  

例示 2

報告語 選択されたLLT コメント
適応外に使用した 適応外使用  
小児患者(群)への適応外使用 使用が認められていない母集団での薬剤使用 患者の母集団に言及している。
18歳未満の患者には使用が認められていない薬剤Xが10歳の少年に投与された。 成人用製品の小児への使用 LLT「成人用製品の小児への使用」はPT「適応外使用」にリンクしている。

        3.27.2 副作用/有害事象を伴って報告された適応外使用
未承認の適応症に使用されたことにより副作用/有害事象が発現した場合の好ましい選択肢は、副作用/有害事象欄に副作用/有害事象の用語を選択し、さらにLLT「適応外使用」あるいはPT「適応外使用」の下位の適切なLLTおよび医学的状態を表す用語を選択することである。他の方法としては、医学的状態を表す用語を選択し、併せて副作用/有害事象の用語を選択することである。

例示

報告語 選択されたLLT 好ましい選択肢
患者は肺高血圧症が適応症としては表示されていない薬剤を投与され、脳卒中を起こした 適応外使用
脳卒中
肺高血圧症
脳卒中
肺高血圧症
 

3.28 製品品質の問題
製品品質に関する問題は患者の安全性に関連を持つ可能性があるということを認識しておくことが重要である。それらは、有害事象との関連で、あるいは製品品質監視システムの一環として報告される可能性がある。
製品品質に関する問題は、製造/表示、包装、輸送、製品の取扱いあるいは保存の過程で引き起こされる異常な状態と定義される。これらは臨床的に影響を生じるかもしれないし、生じないかもしれない。こうした概念は用語選択にとっては難題であるかもしれない。
SOC「一般・全身障害および投与部位の状態」の下位のHLGT「製品品質に関する問題」にリンクしている用語を十分に理解しておくことが、これらの用語選択には必須である。このHLGTの下位にはHLT「製品包装に関する問題」、HLT「製品物性に関する問題」等の製品品質に関連した特別な分類がある。MedDRAの階層構造に従って適切なLLTまで下方展開(Navigating down)することが用語選択の最適な方法である。
特定の製品品質用語(例えば「製品コーティングの不完全」)の利用に関する説明はMedDRA手引書の付録B「用語概念の記述」に記述されている。

        3.28.1 臨床的影響を伴う製品品質の問題
製品品質に関連する問題が臨床的影響のある結果を持つ場合は、製品品質に関連する用語と臨床的影響に関する双方の用語が選択されるべきである。

例示

報告語 選択されたLLT
新しいボトルの錠剤は異常な化学臭がして、私は悪心を催した 製品の異臭
悪心
降圧剤を或る銘柄から他に変更したら、口臭が発生した 先発品間での製品代替の問題
口臭
消費者が購入したチューブ入り歯磨きが、かび臭いのに気が付いた。後日の同一ロットの検査によりその製品は偽造品であることが判明した 製品の偽造
製品の異臭

        3.28.2 臨床的影響を伴わない製品品質の問題
臨床的影響がない場合でも製品品質に関連する問題の発生を捉えることは重要である。

例示

報告語 選択されたLLT
受け取った無菌腰椎穿刺キットの包装が壊れていた(滅菌状態の欠陥) 製品の無菌包装破損

        3.28.3 製品品質の問題と投薬過誤
製品品質に関連する問題と投薬過誤を識別することは重要である。
製品品質に関する問題は、製造/表示、包装、輸送、製品の取扱いあるいは保存の過程で引き起こされる異常な状態と定義される。これらは臨床的に影響する場合としない場合がある。
投薬過誤とは、薬剤が医療関係者、患者または消費者の管理下にある場合で、患者に有害なこと、または、薬剤の不適切な使用を引き起こすかもしれないすべての回避可能な出来事と定義される。
製品品質問題の用語に関連する説明はMedDRAの手引書の付録Bの「用語概念の記述」に記述してある。

例示

報告語 選択されたLLT コメント
薬剤師が薬剤Aの調剤の際、不注意で薬剤Bのラベルを貼り付けた。 調剤中の薬剤表示過誤 投薬過誤
薬店の店員が口内洗浄液を出荷する際、幾つかのボトルに間違った製品ラベルが貼ってあることに気が付いた。 誤った製品への表示 製品品質に関連する問題
母親が滴下器の目盛が見づらいため、処方された抗生物質の量を少なく(子供に)投与した。 製品滴下器の目盛読取不能
不十分な投与量
製品品質に関連する問題
および
投薬過誤


第四章 付録

4.1 バージョン管理

        4.1.1 バージョン管理の方法
MedDRA利用のそれぞれの組織はバージョン管理の戦略を策定すべきで、それは文書化されなければならない。バージョン管理戦略は安全性データベースと臨床試験データベースで異なることもある。例えば、臨床試験では、古い臨床試験で現在利用しておらず、将来も利用しないデータについてはバージョン更新の必要がないことも考えられる。一方、市販後の安全性データは最新(あるいはそれに近い)バージョンで報告することが要求され、バージョン更新の推奨が実施されるべきである。
ユーザーはそれぞれの組織の性格に基づき、最も適した方法を選択すべきである。下記に示した幾つかの方法(オプション)は、それぞれの利用組織が新しいバージョンの導入に際して利用できる事例を示したものである。これらの方法は規制上の要件と理解すべきではないが、組織内あるいは組織間の効果的なコミュニケーションに有効に利用すべきである。
下記の表は新バージョン適用の幾つかのタイプをまとめたものである。

方法 内容 リソースの
必要性
データの
正確性
1 新バージョンを利用して、新規データのコード化を開始する。既存データの再コード化は実施しない。 最少 最少
2 ノンカレントとなったLLTにリンクしている報告語を特定し、既存のデータを再コード化する。
3 ノンカレントとなったLLTにリンクしている報告語を特定し、既存のデータを再コード化する。
かつ、報告語を直接一致または語彙的に一致する新しいLLTに再コード化する。
4 ノンカレントとなったLLTにリンクしている報告語を特定し、既存のデータを再コード化する。
かつ、報告語を直接一致または語彙的に一致する新しいLLTに再コード化する。
かつ、報告語を医学的により適切な一致を示す新しいLLTに再コード化する。
最大 最大

ここに示した例がすべてではない。これ以外の新規バージョンの導入方法もあり得る。データベースにどのようにMedDRAデータが格納されているかによっては、データの検索と報告の整合性を確保するために追加の方法が必要かも知れない。その中にはバージョン更新後に医学的評価を実施することも含まれる。
方法4はリソースを最も必要とし、方法1は最少であることに留意されたい。その他の考慮すべき事項は、新たに直接一致あるいは正確な概念を示すLLTを選択すること(方法4)は他の方法と比較して最も正確なデータを提供することになる。
MSSO/JMOはMedDRAのバージョン間の変更を比較する支援ツールをユーザーに提供している。バージョンレポート(MSSOが提供する”Version Report”、JMOが提供する「改訂情報」) は、MedDRAのひとつ前のバージョンと最新のバージョン間での全ての変更をスプレッドシートとしたリストであり、MedDRAの各新バージョンリリースとともに提供される。MSSOでは、任意の二つのMedDRAバージョン間(連続しないものにも対応)での変更の影響を特定し理解することを支援するMedDRA Version Analysis Tool (MVAT) も提供している。(付録の4.2項を参照)

        4.1.2 新バージョン導入のタイミング
個別症例報告の場合は、情報を発信する側と受信する側のMedDRAのバージョンが同一のものである必要がある。この新バージョン導入のタイミングに関する個別症例報告および臨床試験データについてMSSOの推奨文書が公表されており個別症例報告の新規MedDRAバージョンへの切り替え時期が示されている(付録4.2項参照)。
その概要は下記のとおりである。

新バージョンで報告する期日(個別症例)
MedDRAの新バージョンはリリースされた2ヶ月後の最初の月曜日に報告に利用するバージョンとなる。ICHの3極でこれに同期をとるため、MSSOは日曜日から月曜日にかけてのGMTの真夜中(12:00)に切り替えることを推奨する。

例示:
・3月1日にMedDRA x.0がリリースされた場合、5月の最初の月曜日からバージョンx.0が報告バージョンとなる。
・9月1日にMedDRA x.1がリリースされた場合、11月の最初の月曜日からバージョンx.1が報告バージョンとなる。

4.2 参考情報へのリンク

下記の資料およびツールはMeDRAのウェブサイト(http//:www.meddra.org)で利用できる。

        •   MedDRA Introductory Guide
        •   MedDRA Change Request Information document
        •   MedDRA Web-based Browser
        •   MedDRA Desktop Browser
        •   MedDRA Version Report (lists all changes in new version) *
        •   MedDRA Version Analysis Tool (compares any two versions) *
        •   MSSO’s Recommendations for Single Case Reporting
        •   MSSO’s Recommendations for Clinical Trial Versioning
        •   Transition Date for the Next MedDRA Version

        *    印はアクセスに ID とPW が必要

4.3 ICH PTC-WGのメンバー

        4.3.1 現在のメンバー

所属 メンバー
Commission of the
European Communities
Sarah Vaughan
Maria Luisa Casini
European Federation of
Pharmaceutical Industries
Associations
Hilary Vass
Christina Winter*
Health Canada Alison Langevin
Lynn Macdonald
Japanese Maintenance Organization Yutaka Nagao
Kazuyuki Sekiguchi
Reiji Tezuka
Japan Pharmaceutical
Manufacturers Association
Yo Tanaka
MedDRA MSSO Judy Harrison
Ministry of Health, Labour
and Welfare
Sonoko Ishihara
Makiko Isozaki
Yuuhei Fukuta
Pharmaceutical Research and
Manufacturers of America
Anna-Lisa Kleckner
JoAnn Medbery
US Food and Drug Administration Sonja Brajovic*
Christopher Breder

* 現在のラポーター(共同)

        4.3.2 過去のメンバー

所属 メンバー
Commission of the
European Communities
Dolores Montero
Carmen Kreft-Jais
Morell David
European Federation of Pharmaceutical
Industries Associations
Barry Hammond†;
Reinhard Fescharek†
Health Canada Heather Morrison; Michelle Seguin;
Heather Sutcliffe; Bill Wilson
Japanese Maintenance Organization Osamu Handa; Akemi Ishikawa; Yasuo Sakurai;
Yuki Tada
Japan Pharmaceutical
Manufacturers Association
Takayoshi Ichikawa; Akemi Ishikawa;
Satoru Mori; Yasuo Sakurai;
Kunikazu Yokoi
MedDRA MSSO JoAnn Medbery;
Patricia Mozzicato
Ministry of Health, Labour and Welfare/
Pharmaceuticals and Medical Devices Agency
Tamaki Fushimi; Wakako Horiki;
Kazuhiro Kemmotsu; Tatsuo Kishi;
Chie Kojima; Emiko Kondo; Hideyuki Kondou;
Kemji Kuramochi; Tetsuya Kusakabe;
Kaori Nomura; Izumi Oba; Shinichi Okamura;
Yoshihiko Sano; Nogusa Takahara;
Kenichi Tamiya; Daisuke Tanaka; Shinichi Watanabe;
Takashi Yasukawa; Go Yamamoto;
Manabu Yamamoto; Nobuhiro Yamamoto
Pharmaceutical Research
and Manufacturers of America
David Goldsmith; Sidney Kahn;
Susan M. Lorenski;
Margaret M. Westland*
US Food and Drug Administration Miles Braun; Andrea Feight;
John (Jake) Kelsey†;Brad Leissa;
Toni Piazza-Hepp

† 過去のラポーター